日本臨床免疫学会会誌
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分子標的治療薬のエビデンス・レビュー2012
分子標的治療薬のエビデンス・レビュー2012-3  骨粗鬆症における分子標的薬
田中 栄
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2012 年 35 巻 4 号 p. 289

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抄録

  骨粗鬆症とは骨強度の低下によって骨折リスクが高まった状態である.2000年の米国NIHのコンセンサスステートメントでは,骨粗鬆症は「骨強度の低下を特徴とし,骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」であり,骨強度は骨密度と骨質の両者によって規定された.1990年代以降,多くの骨粗鬆症治療薬が登場した.中でもビスホスホネートや選択的エストロゲン受容体モジュレーターなどを代表とする骨吸収抑制薬は,綿密に計画された大規模な臨床試験によって,脆弱性骨折の発生を有意に抑制することが示された.しかしながら既存の骨吸収抑制薬による脆弱性骨折予防効果は40-50%程度と限定的であり,長期間の使用によって顎骨壊死や大腿骨の非定型的骨折などの副作用が生じることが報告されている.このような中で破骨細胞分化因子であるreceptor activator of nuclear factor kappa B ligand(RANKL)に対する完全ヒト型モノクローナル抗体であるdenosumabが開発された.Denosumabは半年に一度の皮下投与によって骨吸収を強力に抑制し,ビスホスホネートに勝る骨密度増加作用,骨折予防効果を示す.また骨形成抑制分子であるSclerostinに対する分子標的薬もあらたな骨形成促進薬として臨床開発が進んでいる.本講演ではこれらの分子標的薬について概説する.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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