日本臨床免疫学会会誌
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W1-5  Fc γ RIIB欠損B6マウスへのYaa遺伝子導入によるRAからSLEへの表現型移行
河野 晋也天野 浩文金子 俊之佐藤 綾林 青順広瀬 幸子髙崎 芳成
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2012 年 35 巻 4 号 p. 301a

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抄録

(背景)FcγRIIBは,B細胞の活性化を負にフィードバックする重要な免疫制御分子である.このFcγRIIBを野生型C57BL/6(B6)マウスで欠損したB6.FcγRIIB−/−マウスでは,リウマトイド因子(RF)の出現と関節破壊を伴う関節リウマチ(RA)の病態を呈した(Arthritis Rheum 2011).我々はこのマウスにToll様受容体(TLR)7の重複であるYaa遺伝子を導入することで病態の変化が生じるかを確認する目的でB6.FcγRIIB−/−Yaaマウスを作製し解析した.
(方法)血清中のRF,抗ds-DNA抗体等の自己抗体をELISAで測定,腎臓の免疫組織学的検査,また脾臓細胞についてフローサイトメトリーで解析した.さらに脾臓におけるサイトカインmRNAの発現レベルをリアルタイムPCRを用いて定量解析した.(結果)B6.FcγRIIB−/−YaaマウスはB6.FcγRIIB−/−, B6, B6.Yaaマウスと比較し有意に抗ds-DNA抗体の上昇を認めた.RFはB6マウスと比較して上昇していたが,B6.FcγRIIB−/−, B6.Yaaマウスと同程度であった.6ヶ月齢で半数が蛋白尿を認め,50%生存率は約7カ月であった.腎組織ではSLE様の糸球体腎炎を呈した.脾臓ではCD69陽性B細胞の増加とICOS+PD−1+T細胞の増加を認めた.(考察)RAとSLEでは,共通の遺伝子背景が存在しTLRの刺激など,エピジェネティックな作用が加わることが自己免疫疾患の発症における疾患特異性を決定している可能性がある.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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