日本臨床免疫学会会誌
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W3-1  T細胞性サイトカインと破骨細胞分化
佐藤 浩二郎
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2012 年 35 巻 4 号 p. 304a

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抄録

  破骨細胞は骨基質を吸収するために特殊な分化を遂げた単球系の多核細胞であり,その機能の過剰が骨粗鬆症や炎症性関節炎における骨破壊の原因となると考えられている.長らく探求されていた「破骨細胞分化因子」の本態が活性化T細胞表面に発現するサイトカインRANKLであることが解明された1998年以降,破骨細胞の分化促進に活性化T細胞が関わっているという仮説が提唱された.しかし代表的なT細胞性サイトカイであるインターフェロン(IFN-)γやインターロイキン(IL-)4は強力に破骨細胞分化を抑制する.IFN-γやIL-4を産生しない新規エフェクターT細胞の存在を予想して我々はIL-17産生性細胞であるTh17を同定し報告した.実際Th17細胞は試験管内で破骨細胞の分化を促進したが,これは破骨細胞前駆細胞への直接作用ではなく,骨芽細胞を介しての間接的な作用であった.我々はサイトカインIL-17が関節滑膜細胞に与える影響を明らかにする目的でトランスクリプトーム解析を行い,IL-17がヒト滑膜細胞に各種ケモカインの発現を著明に誘導することを見いだした.一方,予想と異なりIL-17単独の刺激ではRANKLの発現は誘導されなかった.最近関節リウマチや乾癬の治療薬として抗ヒトIL-17抗体の開発が進んでいる.炎症性疾患におけるIL-17の役割を,主として破骨細胞への影響の観点から議論したい.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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