日本臨床免疫学会会誌
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W3-4  骨免疫と歯周病
宇田川 信之小出 雅則中村 美どり高橋 直之
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2012 年 35 巻 4 号 p. 305b

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抄録

【目的】歯周病では,破骨細胞が活性化され歯槽骨が吸収される.我々は,OPG遺伝子欠損(OPG-KO)マウスが著しい歯槽骨吸収を起こすことを見出した.また,OPG-KOマウスに抗RANKL抗体を投与し,歯槽骨吸収の抑制効果を検討した.【方法と結果】(1)8週齢OPG-KOマウスに抗RANKL抗体(5 mg/kg,オリエンタル酵母工業・保田尚孝博士より供与,クローンOYC1)を腹腔に1回投与し,4週後(12週齢)に歯槽骨吸収を評価した.歯槽骨をマイクロCTで撮影し,セメントエナメル境から歯槽骨頂までの距離を5点測定した.それらを合計し,歯槽骨吸収量とした.OPG-KOマウスは著しい歯槽骨吸収を起こした.抗RANKL抗体投与により,歯槽骨吸収が強く抑制された.(2)第一臼歯の根分岐部の歯槽骨量を定量した.OPG-KOマウスの歯槽骨量は正常マウスの約50%に減少していた.抗RANKL抗体投与により,歯槽骨量は約95%まで増加した.(3)歯槽骨における破骨細胞の局在を観察した.OPG-KOマウスでは,多数の破骨細胞が存在し,激しい歯槽骨吸収が観察された.抗RANKL抗体投与により,破骨細胞の数と歯槽骨吸収は共に減少した.(4)骨吸収マーカーとして血清TRAP5bを測定した.OPG-KOマウスではTRAP5b値が高値を示し,抗RANKL抗体投与によりそれは低下した.【結論】1回の抗RANKL抗体投与により,OPG-KOマウスの歯槽骨吸収は抑制された.抗RANKL抗体は,歯槽骨吸収抑制薬として歯周病治療薬となりうる.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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