日本臨床免疫学会会誌
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W5-6  抗好中球細胞質抗体関連血管炎に関わる新規自己抗体Anti-Moesin
鈴木 和男
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2012 年 35 巻 4 号 p. 310b

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抄録
  MPO-ANCA(myeloperoxidase-antineutrophil cytoplasmic antibody)関連血管炎患者の血清MPO-ANCA値は,必ずしも病態と相関しない場合があり,新たな抗体の存在が検討されてきた.そこで,我々は,マウス糸球体血管内皮細胞にMPO抗体が直接反応する対応分子の存在をつきとめmoesinと同定し,接着分子の発現上昇を誘導すること,およびMPO-ANCA関連血管炎モデルマウスSCG/Kjマウスの血漿中に抗体が存在し,腎臓での発現上昇することを報告した(Nagao et al., NDT, 2011).これらの結果から,MPO-ANCAと抗moesin抗体の両者のMPO-AAV(MPO-ANCA associated vasculitis)の病態への関与が考えられた.MPO-AAV患者の血清中の抗moesin抗体価は,健常人と比し有意に高く,血漿中のIL-12p70, IL-7は抗moesin抗体価と有意に相関した.また,in vitroでの抗moesin抗体による好中球,単球との反応が認められた.また,moesin抗体で刺激した培養上清中のサイトカインは,好中球では,IL-8, MCP-1, IFN-γが,単球においては,TNF-α, IL-6, IL-8, MCP-1の産生が有意に上昇した.蛍光抗体での好中球との反応は細胞質型を示した.
  以上の結果から,抗moesin抗体は,MPO-AAVの病態や炎症誘導に関与しており,抗moesin抗体がMPO-ANCAと連動して血管炎を誘導する新規自己抗体である可能性が示唆された.
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© 2012 日本臨床免疫学会
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