日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
MWSワークショップ
MWS-2  B細胞活性化におけるSykの役割と自己免疫病態への関与
岩田 慈山岡 邦宏新納 宏昭中野 和久ワン シャオペイ赤司 浩一田中 良哉
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 35 巻 4 号 p. 321b

詳細
抄録
  自己免疫疾患の病態形成において,B細胞は重要な役割を果たす.Sykは,B細胞受容体(BCR)のシグナル伝達において重要な役割を担うチロシンキナーゼであるが,最近我々は,ヒトB細胞において,Sykを介するシグナルが,TRAF6のoptimalな発現誘導を介してTLR9の効率的なシグナル伝達を齎し,強力なB細胞の活性化とともに,抗体産生など様々な機能発現に重要であることを報告した.そこで今回,Sykのヒト自己免疫疾患への関与について検討した.フローサイトメトリーを用いて末梢血CD19陽性B細胞のリン酸化Syk(p-Syk)を測定したところ,SLE患者(n=58),RA患者(n=62)ではいずれも,B細胞のp-Sykの発現が,健常人(n=27)に比し有意に亢進していた.SLE患者では,B細胞のp-Syk発現は,疾患活動性指標であるSLEDAIに有意に相関しており,また抗ds-DNA抗体陽性例において有意に亢進していた.一方,RA患者では,疾患活動性指標であるDAS28, CDAI, SDAIとの相関は認められなかったが,抗CCP抗体強陽性例で有意な亢進が認められた.以上より,自己免疫疾患病態において,B細胞におけるSykを介するシグナルは,自己抗体産生を介する機序で病態形成に深く関与するとともに,RAに比しSLEで,B細胞のより強い病態への関与が示唆された.
著者関連情報
© 2012 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top