抄録
(目的)今回我々は,1型自己免疫性膵炎(Type 1 AIP)をはじめとするIgG4関連疾患における,IgG4産生機序,制御性T細胞(Treg)の関与について検討した.
(方法)Type 1 AIP33例,アルコール性膵炎11例,特発性膵炎18例,健常人16例を,CD4+CD25highTreg及びnaïve(CD4+CD25+CD45RA+)Treg, IL-10+Treg, IL-10産生に重要なICOS+Tregをフローサイトメトリーにて検討した.Type 1 AIP9例アルコール性10例の切除膵,膵外病変としてType 1 AIP10例とPSC10例の肝組織についてIgG4+/Foxp3+細胞を検討した.
(結果)Type 1 AIPのTreg(3.17%)は,健常人(1.86%)・アルコール性膵炎(1.89%)・特発性慢性膵炎(1.85%)と増加していた.Type 1 AIPのnaïve Treg(0.52%)は,健常人(0.90%)・アルコール性(0.78%)・特発性(0.82%)と減少していた.Type 1 AIPのIL10+ICOS+Treg(3.81%)は健常人(1.38%)より増加していた.切除膵ではType 1 AIPのTregは15.3 cells/HPF/IgG4+細胞20.0 cells/HPF,アルコール性は0.18 cells/HPF/2.1 cells/HPFであった.肝臓ではType 1 AIPのTregは5.33 cells/HPF/IgG4+細胞14.3 cells/HPF,PSCでは2.04 cells/HPF/3.58 cells/HPFで,Type 1 AIPではTreg, IgG4+細胞が増加していた.またIgG4+細胞とTregは正の相関を認めた.
(結論)Type 1 AIPでは,ICOSを介したIL-10産生Tregの増加が高IgG4血症に,発症にはnaïve Tregの減少が関与している可能性があると考えられた.