日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
総説
原発性免疫不全症に対する遺伝子治療の現状と今後の展望
内山 徹小野寺 雅史
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 36 巻 3 号 p. 148-155

詳細
抄録
  原発性免疫不全症(primary immunodeficiency, PID)の根治的治療法として造血幹細胞移植が挙げられるが,至適ドナーがいない場合には移植関連合併症の危険が増大する.このような背景から1990年代よりレトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療がアデノシンデアミナーゼ欠損症に対し開始され,続いてX連鎖重症複合免疫不全症,ウィスコット・アルドリッチ症候群,慢性肉芽腫症など様々なPIDにおいてその効果が確認された.しかし,その後の観察で遺伝子導入細胞の消失や,ウイルスベクターによるがん原遺伝子(proto-oncogene)の活性化とそれに伴う造血系異常(白血病や骨髄異形成症候群)が報告され,更なる開発,改良の必要性が明らかとなった.これらを踏まえ,現在行われている遺伝子治療では,骨髄間隙(niche)確保のための前処置化学療法や,long terminal repeat(LTR)内の強力なエンハンサー配列を削除した自己不活型ベクターが使用されている.今後の臨床試験において,これらの改良が遺伝子治療の更なる有効性や安全性を示すことを期待している.
著者関連情報
© 2013 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top