抄録
POEMS症候群は形質細胞の単クローン性増殖(dyscrasia)を基盤として多発ニューロパチー,胸腹水・浮腫,皮膚変化,M蛋白血症,骨硬化性病変などをきたす全身性疾患である.その病態には血管内皮増殖因子(VEGF)を中心とするサイトカイン異常産生が関わっている.2000年頃まではメルファラン・プレドニゾロン療法が行われてきたが生命予後(平均生存3年),機能予後とも非常に不良であった.我々は2003年から本症候群に対する新規治療として,形質細胞増殖に対して自己末梢血幹細胞移植を伴う大量化学療法,サイトカインのdownregulationを目的にサリドマイド・抗VEGFモノクローナル抗体による治療を約50名の患者に対して行ってきた.それぞれの治療に関する適応,効果,副作用について解析を行った結果について述べる.さらに近年レナリドマイド(サリドマイド誘導体),ボルテゾミブ(プロテアソーム阻害剤)が開発されており,難治例に対する分子標的療法を含めた治療展望と治療ガイドラインについて言及する.