日本臨床免疫学会会誌
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36 巻, 5 号
第41回日本臨床免疫学会総会抄録集
選択された号の論文の196件中1~50を表示しています
特別講演
  • Soumya RAYCHAUDHURI
    2013 年 36 巻 5 号 p. 294-295
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     Family studies have long demonstrated that rheumatoid arthritis susceptibility is linked to an underlying genetic component, both inside and outside of the major histocompatibility complex (MHC). The last decade has seen incredible advances in the discovery of risk loci for rheumatoid arthritis; now there are about 100 disease loci that have been identified. However, understanding the link between genetic loci and disease mechanism, is contingent on investigators identifying causal alleles and elucidating how they function to modify disease susceptibility. We are now just beginning to make this key step. Here we present recent work on (1) efforts to identify rheumatoid arthritis loci outside of the MHC region, (2) efforts within our own group to localize MHC effects to functional amino acid sites within HLA genes, separately for seronegative and seropositive rheumatoid arthritis, and (3) methodological advance to connect non-MHC loci to functional alleles that influence gene regulation in specific immune cell-types.
  • 中村 治雅
    2013 年 36 巻 5 号 p. 296-297
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     非常に患者数の少ない疾患に対して使用される医薬品は,希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ,オーファンは孤児の意)と呼ばれる.国内外で希少性の定義は異なるものの,おおむね患者数の定義は同じである.希少疾患は全体では約5000~7000疾患と言われており,多くの疾患は病態の解明や診断法の確立がされておらず,治療も十分でなく,生命を脅かし永続的な障害を負うものが多いとされる.また希少疾患全体で考えれば,患者数は少ないわけではなく公衆衛生学的にも非常に重要な領域である.しかしながら,オーファンドラッグの開発は,医療上の必要性が高いにもかかわらず,十分に研究開発が進まず,臨床試験の実施も困難と言われており,これらの克服のために様々な対策がなされている.本講演では,オーファンドラッグの開発のための国内外の指定制度や,オーファンドラッグの開発及び承認状況,オーファンドラッグに関わる最近の話題,PMDAの取り組みについて紹介し,オーファンドラッグ開発促進のために何が必要か,何ができるのかを考えたい.
6学会合同シンポジウム
  • 竹内 勤
    2013 年 36 巻 5 号 p. 298
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     関節リウマチの治療は,新規治療薬開発中心として,目覚ましい進歩を続けている.生物学的製剤の有効性は,今,head to head比較試験の時代に突入した.TNFα標的製剤adalimumabに対するtocilizumab比較のADACTA試験が明らかにされた.一方,TNFαを標的とした生物学的製剤は,より製造コストが低い抗体フラグメント製剤(certorizumab-pegol)やバイオシミラー(インフリキシマブシミラーCT-P13)へ,IL-6標的は,IL-6受容体に加え,IL-6そのものに対する抗体製剤(clzakizumab, sirukumab, olokizumab)が治験中で,臨床現場への導入が期待されている.新規標的薬剤としてanti-IL17 mAb (secukinumab),anti-IL20 mAb,anti-GM-CSF受容体mAb(mavirilimumab)のグローバル治験が展開される中で,我が国もこれに積極的に参加している.これら標的サイトカインの病態における位置づけの検討もなされ,TNFαの下流にIL-6が存在し,IL-6からTNFαへのフィードバックは認められない事,IL-17,GM-CSFは,このTNFα-IL-6 axisの上流に位置する可能性が示唆されている.さらに新しい標的,あるいは活動性・バイオマーカーの探索が,網羅的トランスクリプトーム,プロテオーム解析などによって進められている.その研究の一端を紹介したい.
  • 玉井 克人, 菊池 康, 相川 恵梨子, 金田 安史, 片山 一郎
    2013 年 36 巻 5 号 p. 299
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     骨髄内には造血幹細胞と共に間葉系幹細胞が存在する.しかし,末梢血中に血液細胞を供給する造血幹細胞と比較して,間葉系幹細胞の生体内存在意義については未だ不明な点が多い.我々は,皮膚基底膜領域の接着構造遺伝子異常により,日常生活の軽微な外力で全身皮膚の表皮全層が剥離し,重症熱傷様症状が生直後から生涯続く遺伝性水疱性皮膚難病「表皮水疱症」の皮膚再生機序に骨髄由来間葉系幹細胞の寄与を想定して研究を進めて来た.その結果,全身皮膚の剥離表皮から血中に大量放出されるhigh mobility group box1 (HMGB1)が骨髄内の間葉系幹細胞を刺激して血中へと動員し,さらに損傷皮膚特異的集積を誘導すること,皮膚に集積した間葉系幹細胞は種々の皮膚構成細胞へと分化して損傷皮膚の再生を誘導し,さらに皮膚基底膜領域接着構造分子を発現して皮膚構造維持に強く寄与していることが明らかとなった.これらの基礎研究成果を基に,現在我々は,健常家族ドナーから得た骨髄間葉系幹細胞を表皮水疱症難治性皮膚潰瘍周囲に移植して皮膚再生を誘導する本邦初のヒト幹細胞移植臨床研究を実施中であり,また末梢損傷組織への骨髄間葉系幹細胞集積を促進して機能的組織再生を誘導するHMGB1医薬開発を同時に進めている.本シンポジウムでは,これら基礎研究を基にした新しい再生医療開発の現状を報告する.
  • 廣田 泰
    2013 年 36 巻 5 号 p. 300
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     早産は全妊娠の5%で発生し,新生児の死亡や後障害の原因となる.遺伝体質,高年妊娠などの母体側の因子に感染・炎症などの環境因子,多胎などの因子が複雑に絡み合って発生すると考えられ,子宮収縮抑制剤や抗生剤などの対症療法では早産の発生を十分に制御できない現状がある.早産研究には母体因子や感染・炎症などを合わせた多面的アプローチによる研究モデルが必要だったが,これまで適切なモデルがなかった.最近我々は,妊娠子宮に細胞老化が起こり,子宮収縮に関わるPGF2αが上昇し,最終的に早産に至るという,早産の自然発生のマウスモデルを確立した.このモデルは癌抑制遺伝子p53を子宮特異的に欠失したマウスを用いたもので,約半数の妊娠マウスが早産となり,早産に伴う産仔の死亡も認められた.さらにこのマウスはLPS感受性が高く,コントロールマウスでは影響しないLPSの投与量で100%早産になった.この早産発生の仕組みとして,mTORによる子宮の細胞老化と,「妊娠ホルモン」である黄体ホルモン(プロゲステロン)低下が関わっていた.またこのLPS誘導性の早産マウスモデルに対しmTOR阻害剤ラパマイシンとプロゲステロンの同時投与が早産予防に有効であった.
     本発表では,マウスモデルから得られた遺伝体質と感染・炎症との相互作用による早産の発生機構に関する新しい知見をもとに,将来の早産予防戦略の構築を考慮に入れた今後の研究の方向性についての提案を行いたい.
  • 考藤 達哉, 榊原 充, 竹原 徹郎
    2013 年 36 巻 5 号 p. 301
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     樹状細胞(DC)を用いた癌ワクチン療法は消化器癌でも効果が期待されているが,既報の臨床効果は充分でない.これはDCの誘導法が検証されておらず,その抗腫瘍活性が低いことが一因である.そこで我々は遊走能・NK活性能・抗原特異的CTL誘導能に優れた新規DC(OPA-DC)を開発し,有効性と安全性の評価を目的とする大腸癌に対するOPA-DCワクチンの臨床試験を行った.
    【方法】CEA陽性かつHLA-A2402陽性Stage-IV大腸癌患者10例を対象とした.単球をIL4/GMCSF存在下で3日間培養した後,OK432,PGE1,IFNαで刺激してOPA-DCを得た.HLA-A24拘束性CEAペプチドを抗原として添加した.これを計4回鼠径部リンパ節近傍に皮下注射し,臨床効果と免疫学的効果を評価した.
    【結果】10例中2例は原疾患悪化で脱落したが,投与完遂8例では重度の有害事象は認められなかった.8例中6例でNK細胞の頻度上昇を認めた.またNK細胞傷害活性の上昇を認めた2例でCEA抑制効果が得られた.うち1例でRECIST基準でのSDが得られ,同症例ではCEA特異的CTL頻度が上昇した.しかし誘導されたCTLは,大半がセントラルメモリー細胞(Tcm)であった.有効例では開始前の転移巣が他に比して小さかった.
    【結論】OPA-DCは安全に投与可能である.NK細胞刺激能が高く,CEA抑制や腫瘍抑制効果に寄与したと考えられる.一方,誘導されたCTLはエフェクター作用の低いTcmであり,これが充分な臨床効果が得られない一因と考えられた.更に臨床効果を高めるためには,早い段階での投与や免疫抑制因子の制御などの工夫が必要と考えられた.
  • 池田 裕明
    2013 年 36 巻 5 号 p. 302
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     腫瘍特異的T細胞輸注療法は,進行性悪性黒色腫の患者において既存治療法を凌ぐ効果を示す.他の固形癌や造血器腫瘍では特異的T細胞の誘導が困難な場合が多いが,これら疾患の患者にもT細胞療法を可能とする試みとして,腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)遺伝子やキメラ受容体(CAR)遺伝子を導入したT細胞療法が開発され,有効性を示す症例が報告されはじめている.
     T細胞輸注療法は細胞療法であり,場合によっては遺伝子治療であるという方法論の制約ゆえに,医薬品としての開発はがんワクチンや抗体療法の後を追う形となってきた.しかし,近年の臨床試験における顕著な効果は企業等の関心を集めており,今後製薬化,医療化が急速に進むと考えられる.一方,その顕著な臨床効果は副作用の出現可能性と表裏一体であることも明らかになりつつあり,今後はより有効でかつ安全性の高い治療戦略の構築が必須になる.
     我々は,難治性食道癌患者を対象に,がん精巣抗原MAGE-A4特異的なTCR遺伝子をレトロウイルスベクターを用いて患者末梢血リンパ球に体外で導入した後に輸注する,TCR改変T細胞輸注療法の第1相臨床試験を実施した.本臨床試験における安全性,輸注細胞の体内動態,臨床効果につき報告する.また,現在開発中の他の遺伝子改変T細胞輸注療法の前臨床研究におけるデータとともに遺伝子改変T細胞療法の将来的可能性を紹介する.
  • 桑原 聡, 三澤 園子
    2013 年 36 巻 5 号 p. 303
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     POEMS症候群は形質細胞の単クローン性増殖(dyscrasia)を基盤として多発ニューロパチー,胸腹水・浮腫,皮膚変化,M蛋白血症,骨硬化性病変などをきたす全身性疾患である.その病態には血管内皮増殖因子(VEGF)を中心とするサイトカイン異常産生が関わっている.2000年頃まではメルファラン・プレドニゾロン療法が行われてきたが生命予後(平均生存3年),機能予後とも非常に不良であった.我々は2003年から本症候群に対する新規治療として,形質細胞増殖に対して自己末梢血幹細胞移植を伴う大量化学療法,サイトカインのdownregulationを目的にサリドマイド・抗VEGFモノクローナル抗体による治療を約50名の患者に対して行ってきた.それぞれの治療に関する適応,効果,副作用について解析を行った結果について述べる.さらに近年レナリドマイド(サリドマイド誘導体),ボルテゾミブ(プロテアソーム阻害剤)が開発されており,難治例に対する分子標的療法を含めた治療展望と治療ガイドラインについて言及する.
スポンサードシンポジウム
  • 田中 敏郎, 嶋 良仁, 平野 亨, 楢崎 雅司, 緒方 篤, 熊ノ郷 淳, 岸本 忠三
    2013 年 36 巻 5 号 p. 304
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     IL-6は,感染や火傷などの生体ストレス時に速やかに産生され,急性期蛋白の産生誘導や免疫系や血液系細胞を活性化し,生体防御に寄与するサイトカインである.一方,何らかの原因によるある細胞からの持続的なIL-6の過剰産生は,様々な慢性炎症や免疫疾患の発症や進展に関与することが明らかとなり,IL-6の作用を阻害するヒト化抗IL-6受容体抗体トシリズマブが開発された.トシリズマブは,本邦から世界に広がる臨床試験,治験により,関節リウマチ,キャッスルマン病や若年性特発性関節炎に対する有効性,安全性が検証され,本邦のみならず,諸外国においても,これらの疾患に対する画期的な治療薬として承認されている.IL-6阻害療法は,他の様々な炎症・免疫疾患に対しても新規な治療手段となる可能性があり,成人発症スチル病,リウマチ性多発筋痛症,アミロイドAアミロイドーシス,ベーチェット病,自己炎症症候群等の炎症性疾患,全身性硬化症,血管炎症候群,多発性・皮膚筋炎,再発性多発軟骨炎,視神経脊髄炎などの自己免疫疾患に対する臨床研究,試験が進められている.本シンポジウムでは,現状のevidenceを紹介するともに,IL-6阻害療法の免疫難病への適応拡大の可能性,その有効性のメカニズム,また,何故様々な免疫難病においてIL-6が持続的に産生されるのかその病因に関して,展望したい.
  • 仲 哲治, 世良田 聡, 藤本 穣
    2013 年 36 巻 5 号 p. 305
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     近年,TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインに対する阻害抗体が関節リウマチ,クローン病,ベーチェット病などの炎症性疾患に臨床応用され優れた治療効果を示している.しかしながら,これら抗体医薬品,特にIL-6R阻害抗体使用時のIL-6抑制下においては,IL-6で誘導されるCRPやSAAなどの炎症マーカーが指標として用いることが出来ないため,IL-6R阻害抗体使用時の炎症の評価や感染症罹患の早期の検出が困難となっている.また,潰瘍性大腸炎やSLEなどCRPが有効な活動性マーカーとならない疾患が知られている.今回,われわれはTNF-α阻害抗体治療前後の関節リウマチ患者血清より,治療前の活動期に高く,治療後の寛解期に低くなるタンパクとしてLRG (leucine rich alpha 2 glycoprotein)を同定した.LRGは関節リウマチのみならず,クローン病,潰瘍性大腸炎などにおいても,活動期に高く寛解期に低くなり,またCRPよりも強く疾患活動性と相関し,内視鏡スコア—とも相関を示した.また,LRGは肺炎や肺結核罹患時においても上昇し,IL-6以外にTNF-α,IL-22,IL-1βなどの炎症時に誘導されるサイトカインによっても発現が誘導されることから,IL-6抑制下における炎症,感染症を評価しうる炎症マーカー,すなわちIL-6R阻害抗体のサロゲートマーカーとして臨床応用が出来る可能性が示唆された.
  • 荒木 学, 松岡 貴子, 中村 雅一, 三宅 幸子, 岡本 智子, 村田 美穂, 荒浪 利昌, 山村 隆
    2013 年 36 巻 5 号 p. 306
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     視神経脊髄炎は視神経と脊髄を主病変とする自己免疫性の中枢神経疾患であり,疾患特異的なマーカーとして脳・脊髄に豊富に存在するアクアポリン-4に対する自己抗体が陽性を示す.多発性硬化症に比して重症化しやすく,高度の視神経や身体機能障害を呈するのみならず,神経因性疼痛などの後遺症も薬物治療に抵抗姓を示すことも多い.
     過去に我々は抗AQP4抗体産生細胞としてPlasmablast(CD19+CD27highCD38highCD180)を同定し,その増殖にIL-6が重要であることを明らかにした.この結果よりIL-6シグナルを抑える薬理効果を有する抗IL-6受容体抗体tocilizumab(TCZ)を新規NMO治療薬の候補とし,その臨床効果と安全性を評価した(医師主導型臨床研究:UMIN000005889,UMIN000007866).
     女性4名,男性1名に,月1回TCZ 8 mg/kgを12ヶ月間投与し,年間再発回数(Annualized relapse rate : ARR),総合障害度評価尺度(Expanded disability status scale : EDSS),痛みと疲労の評価尺度(Numerical rating scale : NRS)が有意に改善した.また,多くの症例で抗AQP4抗体価が低下した.TCZ治療により再発回数の減少のみならず,治療抵抗性の慢性疼痛に効果を示したことから,難治性NMOに対する有望な治療選択肢になり得る.
  • 横田 俊平
    2013 年 36 巻 5 号 p. 307
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     若年性特発性関節炎は全身型と関節型(少関節型および多関節型)に分けられる.全身型は弛張熱,発熱時の発疹,関節炎を主徴とし,FDG-PETの検索から骨の赤色髄の炎症を起点として全身に波及していく炎症で,全身症状のひとつとして関節炎が表れる.関節型が成人のRAと同様に慢性滑膜関節炎で,両者は発症の起点の違いから別疾患とする考え方が非常している.全身型の炎症は弛張熱の動態がIL-6の変動と一致することからIL-6が病態形成の核になっており,本邦で開発されたtocilizumabの臨床試験を進めたところ短期間で全身炎症が終息した.すなわち,本症ではIL-6が炎症惹起のleading cytokineになっており,この主導的サイトカインを遮断することで炎症全体が鎮静化する.他方,関節型若年性特発性関節炎は,TNFα遮断薬,IL-1β遮断薬,またIL-6レセプター遮断薬のいずれでも,炎症を終息に向かわせることできる.このことより,関節型においてはTNFα-IL-1β-IL-6などの炎症性サイトカインがvicious cycleを形成して炎症を増幅している可能性が考えられる.したがって,どのサイトヵインを遮断しても,cycleが停止し炎症が終息するものと思われる.以上,炎症病態において,炎症性サイトカインはさまざまな関わり方で炎症の惹起,持続に役割を果たしている.
  • 久松 理一, 松岡 克善, 長沼 誠, 金井 隆典
    2013 年 36 巻 5 号 p. 308
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     炎症性腸疾患(IBD)はクローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)に分類される.我が国のIBD登録患者数は増加しておりCDは3万人超,UCは13万人超に至っている.生物学的製剤である抗TNFα抗体製剤がCDに,そして引き続きUCにも承認されIBDの治療戦略は大きく変わりつつある.CDにおいては疾患概念そのものの見直しが行われ,CDを進行性の疾患と考えるべきであるということ,長期予後の改善を最終目標にすること,が強調されるようになった.その結果,治療評価方法の見直し,従来治療の再評価が行われるとともに抗TNFα抗体製剤による早期治療介入という新しいストラテジーも唱えられるようになった.
     UCにおいても抗TNFα抗体製剤が承認され,中等症以上の難治性UCの治療戦略は大きく変化している.いっぽうでUCをCDのように進行性の疾患と考えるべきかどうかについてはまだ議論が必要である.抗TNFα抗体製剤の優れた治療効果はIBDの治療戦略に変革をもたらしたが,抗TNFα抗体製剤がIBDの自然史を変え長期予後を本当に改善するのかどうかは今後証明されなければならない.さらに副作用のモニタリング,高騰する医療費という新たな問題も生じており,どのような患者が抗TNFα抗体製剤の早期介入を必要とするのか,抗TNFα抗体製剤からの離脱は可能なのか,といった課題が明らかにされなければならない.また我が国では抗TNFα抗体製剤に対する一次無効例への対応手段がなく,抗TNFα抗体とは作用機序の異なる治療薬の開発承認が求められている.
合同シンポジウム
  • 森尾 友宏, 高木 正稔, 水谷 修紀, 今井 耕輔
    2013 年 36 巻 5 号 p. 309
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     原発性免疫不全症候群(Primary immunodeficiency : PID)は自然免疫系あるいは獲得免疫系に関与する分子の異常によって発症する免疫異常症である.その主たる症状は「易感染性」であり,典型的には患者は,幼小児期より,反復感染症,重症感染症や日和見感染症などに罹患する.一方,PIDは「易感染性」のみを示すのではなく,自己免疫疾患,血球減少,悪性腫瘍が主たる問題となる疾患もある.多彩な疾患群を含んでおり,現在のところ200前後の疾患があり,240以上の責任遺伝子が明らかになっている.PIDはexperiment of natureと呼称され,その解析により例えば,BTK,CD154(CD40L),CD278(ICOS),STAT1,STAT3など様々な分子の,ヒトにおける機能や重要性が明らかになり,問題となる免疫担当細胞の免疫系における役割が解明されてきた.PIDの解析は従って,ヒト免疫の分子的背景の理解と,治療法の開発に向けて有用な情報を提供していると言える.以前から知られていた分子異常においても,その分子の新たな機能が次々と明らかになっている状況である.ここではその中からいくつかの重要な研究を取り上げ,PID研究のヒト免疫研究における役割と,今後の研究の展望について紹介したい.
  • 藤尾 圭志, 岡村 僚久, 住友 秀次, 岩崎 由希子, 森田 薫, 井上 眞璃子, 仲地 真一郎, 岡本 明子, 庄田 宏文, 石垣 和慶 ...
    2013 年 36 巻 5 号 p. 310
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     制御性T細胞(Treg)は自己免疫応答に対する重要な抑制機構であり,CD4陽性CD25陽性Foxp3陽性Treg,Tr-1,CD8陽性制御性T細胞等が知られている.我々は近年IL-10を大量に産生し転写因子Egr2を発現するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性Treg(LAG3 Treg)を新たなTregサブセットとしてマウスとヒトで同定した.興味深いことにマウスLAG3TregはSLEモデルマウスMRL/lprマウスの自己抗体産生と腎炎進行を抑制し,試験管内および生体内でのヘルパーT細胞とB細胞による抗体産生をPD-1-PD-L1およびFas-FasL依存性に抑制した.試験管内での抗CD40抗体によるT細胞非存在下でのB細胞の分裂および抗体産生はLAG3Tregにより抑制され,またFasL欠損B細胞を生体内に移入するとLAG3Tregは抗体産生を抑制できなかったことから,LAG3TregはB細胞を直接抑制すると考えられた.ヒトでも扁桃腺と末梢血にLAG3Tregが存在し,試験管内で細胞接触依存性に強力な抗体産生抑制能を発揮した.関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)患者末梢血ではLGA3Tregが減少していた.現在LAG3TregによるB細胞抑制機構と各種免疫抑制治療によるLAG3Tregへの修飾を解析中である.
  • 佐藤 和貴郎, 荒浪 利昌, 冨田 敦子, 千原 典夫, 岡本 智子, 林 幼偉, 村田 美穂, 三宅 幸子, 山村 隆
    2013 年 36 巻 5 号 p. 311
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     多発性硬化症(Multiple Sclerosis : MS)は炎症性脱髄を特徴とする,代表的な中枢神経を場とする臓器特異的自己免疫疾患である.再発と寛解そして進行性の経過が一般的である.根本原因は不明であるがリンパ球を標的とした治療が有効である.MSの病理ではIFNγ産生性のTh1細胞とともにIL-17産生性のTh17細胞の病原性が示唆されているが,詳細は不明である.
     Th1細胞とTh17細胞は,異なるケモカイン受容体を発現するため,逆にケモカイン受容体の発現パターンからTh1/Th17細胞の関与を推定しうる.MS患者のCD4+T細胞におけるCCR2,CCR4,CCR5,CCR6の発現の有無をフローサイトメトリーで調べ,計16種の細胞分画(例えばCCR2+CCR4-CCR5-CCR6+など)の頻度を得た.末梢血CD4+T細胞における各分画の頻度はコントロールと比べて有意な変化を認めなかったが,再発期MS患者の脳脊髄液のCD4+T細胞を調べると,CCR2+CCR5+細胞の頻度が,末梢血中の頻度と比べ疾患特異的に増加していた.すなわち同細胞が中枢神経内に集積していることが示唆された.同細胞は活性化によりIFNγとIL-17の両者を産生し,また血液脳関門を通過し,脳・脊髄に浸潤しやすい性質をもつことが分かった.以上からMSの再発に関与する重要な細胞と考えられた.
     複数のケモカイン受容体の発現の組み合わせを調べることにより,疾患に重要な細胞分画を明らかにすることが可能である.現在,他の神経疾患への応用を試みている.
  • 園田 康平, 武田 篤信, 吉村 武
    2013 年 36 巻 5 号 p. 312
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     ぶどう膜炎とは,狭義には「ぶどう膜組織の炎症」であるが,臨床的には「眼内の全ての炎症」を指す.ぶどう膜炎は単一疾患ではなく,自己免疫疾患,感染症,造血器悪性腫瘍など多種多様な原因や背景をもとに発症する.ぶどう膜炎の多くは再発する可能性のある慢性病であり,姑息的に眼炎症をコントロールするだけでなく,長期的観点から患者の視機能を考える必要がある.
     眼ベーチェット病は,放置すれば中途失明に至る重篤な全身疾患である.コルヒチン・シクロスポリンを中心とした従来の治療に多くの患者が抵抗性で,視機能予後の悪いぶどう膜炎の代表格であった.2007年から抗TNFα治療が始まり,生物製剤によって眼発作回数が激減し,患者が失明の恐怖から解放されたと言っても過言ではない.今後,二次無効や中止時期の問題などの課題もあるが,治療に大きな変革をもたらしている.
     現在ベーチェット病以外のぶどう膜炎では生物製剤の使用が認められていない.しかし遷延化したVogt-小柳-原田病やサルコイドーシスの患者では副腎皮質ステロイドでの治療が難しく新たな治療が求められている.ぶどう膜炎治療における今後の展望について,自験例を交えながら考察してみたい.
  • 鳥越 俊彦, 廣橋 良彦, 塚原 智英, 島 宏彰, 水口 徹, 平田 公一, 佐藤 昇志
    2013 年 36 巻 5 号 p. 313
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     我々は過去20年以上にわたってヒトがん抗原の同定とそれに対する免疫応答の分子機構を解明し,Survivinをはじめとする10種類以上のヒトがん抗原とそのHLA class I拘束性T細胞エピトープの構造を明らかにしてきた.抗原ペプチドを用いて患者の末梢血リンパ球を刺激すると,ペプチド特異的細胞障害性T細胞が誘導される.平成14年度からSVN-2Bペプチドワクチンの臨床試験を開始.平成23年度からは医師主導治験を実施している.Tetramerを用いた免疫モニタリングの結果,ペプチド特異的T細胞の頻度と抗腫瘍効果との間に相関性が見出された.また,インターフェロンの併用によって臨床効果が増強することが判明した.10月には進行膵臓がんに対する第2相試験(二重盲検試験)をスタートする.
     一方で我々は,ヒトの固形腫瘍細胞株からがん幹細胞(CSC)を分離することに成功し,現在CSC特異抗原の探索を実施している.がん幹細胞は,長寿命・高い造腫瘍能力・高い遊走能・抗がん剤耐性などの特性を有することから,がん再発と転移の根幹をなす細胞であると推察されている.CSC特異抗原はどのような分子か,CSC特異的細胞障害性T細胞の誘導とCSC標的治療モデル等を紹介し,がん幹細胞標的ワクチン創薬に向けての歩みと展望についても議論したい.
  • 服部 正平
    2013 年 36 巻 5 号 p. 314
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     人体には無数の細菌が棲んでいる.この細菌の集団(常在菌叢)を構成する細菌の種類は1,000種以上で,その総数はヒト細胞よりも1桁多く数百兆個と見積もられている.その中で腸内細菌叢はもっとも多様で多数の細菌種から構成される.腸内細菌叢は宿主の健康や恒常性の維持に働く一方で,自己免疫疾患や肥満,糖尿病などのさまざまな疾患にも密接に関係する.このことから,ヒトはヒトゲノムとヒト常在菌叢ゲノム(ヒトマイクロバイオーム)から成り立つ「超有機体」であると考えることができる(Lederberg, J. : Science, 2000).近年におけるDNAシークエンサーの革新的進歩は,この複雑で多様性に富んだ腸内を含めたヒト常在菌叢の実体解明を可能にした.とくに,細菌叢の16SリボソームRNA遺伝子やメタゲノム解析,分離株の個別細菌ゲノム解析,これらの大量データを解析するバイオインフォマティクスを用いたゲノム科学的アプローチは,細菌叢構造の網羅的かつ定量的な評価ならびに疾患患者の細菌叢の特徴や関連する細菌種のピンポイントでの特定も可能にする.
  • 本田 賢也, 新 幸二, 田ノ上 大, 永野 勇治, 成島 聖子, 大島 健志朗, 須田 亙, 森田 英利, 服部 正平
    2013 年 36 巻 5 号 p. 315
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     腸内細菌と常に接する消化管粘膜は,非常にユニークな免疫システムを形成している.中でも,Th17細胞やTreg細胞が,消化管粘膜に多数存在することが知られている.我々は無菌マウスを検討することで,Th17細胞・Treg細胞それぞれの分化・機能に腸内細菌が深く影響を与えていることを見出した.さらに腸内細菌をスクリーニングし,Th17細胞分化を誘導するマウス腸内細菌としてセグメント細菌を同定した.さらに,Treg細胞分化を誘導する細菌として,クロストリジアに属するマウス消化果敢に由来する細菌種を,同定した.更にヒト便からスタートして幾つかの選択過程を経て,Treg細胞を誘導するヒト由来クロストリジアに属する細菌株も単離した.我々の研究結果は,慢性炎症性腸疾患や,多発性硬化症などの自己免疫疾患治療に応用できる可能性があると考えている.
  • 大谷 直子
    2013 年 36 巻 5 号 p. 316
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     近年,肥満は糖尿病や心筋梗塞だけでなく,様々ながんを促進することが指摘されている.しかし,その分子メカニズムの詳細は十分には明らかになっていない.今回我々は,全身性の発癌モデルマウスを用いて,肥満により肝がんの発症が著しく増加することを見出した.興味深いことに,肥満すると,2次胆汁酸を産生する腸内細菌が増加し,体内の2次胆汁酸であるデオキシコール酸の量が増え,これにより腸肝循環を介して肝臓の間質に存在する肝星細胞が「細胞老化」を起こすことが明らかになった.「細胞老化」とはもともと,細胞に強いDNA損傷が生じた際に発動される生体防御機構(不可逆的細胞増殖停止)である.しかし最近,細胞老化をおこすと細胞が死滅せず長期間生存し,細胞老化関連分泌因子(SASP因子)と呼ばれる様々な炎症性サイトカインやプロテアーゼ等を分泌することが培養細胞で示された.実際我々の系でも,細胞老化を起こした肝星細胞は発がん促進作用のある炎症性サイトカイン等のSASP因子を分泌することで,周囲の肝実質細胞のがん化を促進することが明らかになった.さらに臨床サンプルを用いた解析から,同様のメカニズムがヒトの肥満に伴う肝がんの発症に関与している可能性も示された.本研究により肥満に伴う肝がんの発症メカニズムの一端が明らかになったと考えられる.今後,2次胆汁酸産生菌の増殖を抑制することにより,肝がんの予防につながる可能性が期待される.
  • 三宅 幸子
    2013 年 36 巻 5 号 p. 317
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     腸管は最大の免疫組織であり,免疫応答の調節器官として注目されている.腸内環境を変化させることにより,自己免疫疾患モデルでは病態が変化することを報告してきたが,腸内細菌は自己応答性リンパ球,制御性リンパ球,自然リンパ球など様々な細胞の重要な免疫調節因子となる.腸管免疫がどのように自己免疫を調節するのか,また腸内細菌がどのように関与するのか,さらに自己免疫疾患における腸内細菌叢の変化について議論する.
  • 大野 博司, 古澤 之裕, 尾畑 佑樹, 福田 真嗣, 長谷 耕二
    2013 年 36 巻 5 号 p. 318
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     われわれの腸内には100兆個以上もの細菌が共生しており,宿主との相互作用によりユニークな「腸生態系」を構築している.われわれは,宿主-腸内フローラ相互作用に基づく腸生態系をより包括的に理解するためにゲノミクス,トランスクリプトミクス,メタボロミクスなどを統合したオミクス手法を考案し応用してきた.
     無菌マウスにある種のビフィズス菌を定着させておくと,その後の腸管出血性大腸菌O157投与による感染死を抑止できるが,その分子機構は不明であった.演者らは,統合オミクス手法を応用することにより,ビフィズス菌が産生する酢酸が腸粘膜上皮の抵抗力を増強することで,マウスのO157感染死を予防することを明らかにした.また,ビフィズス菌の全ゲノム比較解析から,O157感染死を予防できるビフィズス菌にのみ存在し,O157感染死を予防できないビフィズス菌では欠失している果糖トランスポーター遺伝子の同定にも成功した.この結果は,統合オミクス手法が複雑な宿主-腸内細菌相互作用の解析に効果的であることを証明するとともに,ビフィズス菌のプロバイオティクス作用のメカニズムの一端を初めて明らかにしたものである.
     演者らは最近,統合オミクス手法を用いて腸内フローラが大腸の制御性T細胞の分化を誘導する分子機構も解析しており,この結果もあわせて紹介したい.
下関開催記念シンポジウム
  • 中村 英樹, 高橋 良子, 寶來 吉朗, 中島 好一, 中村 龍文, 川上 純
    2013 年 36 巻 5 号 p. 319
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     HTLV-Iの高浸淫地域である長崎ではシェーグレン症候群(SS)でのHTLV-Iの陽性率が高く,HTLV-I関連脊髄症(HAM)においても高頻度にSSがみられる.HTLV-I感染の有無でFas/FasLやXIAPなど唾液腺細胞死関連蛋白発現の差はなかったが,唾液腺造影と口唇生検陽性率の比較から抗HTLV-I陽性SS群では唾液腺破壊が生じやすいことが明らかとなった.この一因として異所性二次濾胞(GC)の陽性率を検討し,抗HTLV-I抗体陰性SSでGCを有する症例ではCXCL13が高発現していた.CXCL13発現はGCを持たない抗HTLV-I抗体陰性SSや抗HTLV-I抗体陽性SSでも一部観察されたが,HAM-SS症例では,炎症細胞浸潤はあるもののCXCL13発現は観察されなかった.さらに,CXCL13産生細胞である濾胞性樹状細胞の発現とCXCL13発現検討では,GCを有する抗HTLV-I抗体陰性SSにおいて両者は共発現を示した.HTLV-I関連SSの病態の更なる解析のため,HAM患者脊髄液より樹立された細胞株HCT-5と,SS患者口唇生検組織から得られた唾液腺上皮細胞の共培養を行い,上清のサイトカインアレイを行った.sICAM-1やRANTESなど細胞接着・遊走に関わる分子やIP-10などの発現亢進が観察された.一方,共培養時のライセートのアポトーシスアレイでは,pro-caspase 3やFasなど細胞死を誘導する分子の他HSP27など抗アポトーシス分子の発現亢進も観察された.
     これらのアレイ解析の結果は,HCT-5のSS唾液腺上皮細胞に対する間接的作用あるいは直接的な作用のいずれかが想定されるが,HTLV-IのSS唾液腺上皮に対する直接的な作用の有無について,現在検討中である.
  • 岡山 昭彦, 川上 純, 藤田 次郎, 瀬戸山 充, 望月 學
    2013 年 36 巻 5 号 p. 320
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     ヒトTリンパ向性ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病(ATL)や神経変性疾患であるHTLV-1関連脊髄症(HAM)の原因である.HTLV-1高浸淫地域においてはATL,HAM以外にもぶどう膜炎,関節炎,膠原病,慢性肺疾患,慢性皮膚疾患など種々の慢性炎症疾患に本ウイルスキャリアが高頻度に見られることが報告されており,関連が示唆されている.しかし,その発症メカニズム,またHTLV-1陽性患者が陰性患者と異なる臨床像を示すか否か等不明な点が多い.さらに関節リウマチをはじめとする難治性慢性炎症性疾患においては,近年タクロリムスのような免疫抑制剤や抗サイトカイン作用を主とした生物学的製剤が頻繁に使用されるようになり,HTLV-1陽性患者では治療反応性や安全性が陰性の患者と異なるのか否かについて検討する必要がある.また疾患を有するHTLV-1キャリアではATL発症頻度が高いのではないかという報告もあり,ウイルス学的な病態の検討も必要である.このため平成23-24年度において厚労研究班としてこれらの諸問題について基礎的臨床的検討を行った.本シンポジウムにおいてはこの研究班での知見を中心に,HTLV-1陽性慢性炎症性疾患研究の今後について考えたい.
  • 塚本 浩, 堀内 孝彦
    2013 年 36 巻 5 号 p. 321
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     自己免疫疾患の中には進行性の間質性肺炎や皮膚硬化を呈し,治療抵抗性で予後不良の疾患群が依然として存在し,その克服が重要な課題となっている.欧米では,動物実験における研究成果を基にこのような難治性自己免疫疾患症例に対する新規治療法として,自己造血幹細胞移植(自己HSCT)の臨床応用が始まり,われわれも難治性自己免疫疾患23例に対し自己HSCTを施行した.対象症例の内訳は全身性硬化症(SSc)19例,皮膚筋炎3例,多発血管炎性肉芽腫症1例で自己HSCT後,皮膚硬化,間質性肺炎,皮膚潰瘍の改善や自己抗体の低下等多くの症例で臨床的寛解が得られ,その効果は長期間持続した.治療関連死は認めなかった.有効性のメカニズムを明らかにするため,自己HSCT後の免疫学的再構築を検討したところ,SSc患者では自己HSCT後5年間Th1/Th2バランスにおいてTh1優位が持続した.TCRレパトアの多様性の解析ではSSc患者において治療前は一部のVβのCDR3サイズがoligoclonalまたはmonoclonalな分布を示したが,自己HSCT後にTCRレパトアの多様性が有意に回復した.SSc患者ではリンパ球各亜分画において健常人とは異なる遺伝子発現プロファイルを示したが,自己HSCT後に正常化する傾向が認められた.以上,難治性自己免疫疾患の治療において,自己HSCTは有力な選択肢の一つと考えられる.
  • 玉田 耕治
    2013 年 36 巻 5 号 p. 322
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     がんに対する免疫療法の成功には,1)適切な標的抗原の同定と選択,2)標的抗原に対する強力な免疫応答の誘導,および3)がんによる免疫抑制機構の解除が必要である.これらを目的として,免疫共シグナル分子の機能制御によるがん免疫療法の開発が世界中で進められている.その一つがチェックポイント阻害療法であり,腫瘍反応性T細胞の活性化やエフェクター機能に関する抑制性共シグナルを阻害することで抗腫瘍免疫活性を高めるものである.抗CTLA-4抗体はすでに米国FDAにがん治療薬として承認され,腫瘍微小環境での抑制性共シグナル経路であるPD-1/PD-L1に対する中和抗体も臨床試験が進んでいる.もう一つの開発戦略がキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor : CAR)によるものである.CARはがん細胞を認識する一本鎖抗体とT細胞の活性化を誘導する細胞内シグナル伝達配列を融合させたキメラ蛋白である.CARを遺伝子導入したT細胞を投与するがん免疫療法は現在欧米で多くの臨床試験が実施されており,血液系悪性腫瘍にて優れた治療効果が示されている.CAR配列には刺激性共シグナル分子であるCD28,4-1BBなどのシグナル伝達領域が組み込まれており,より強力なT細胞の活性化を誘導する構造となっている.本発表ではこれらの最新のがん免疫療法の進展と将来展望について共シグナル分子の視点から考察する.
  • 長谷川 均
    2013 年 36 巻 5 号 p. 323
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     免疫寛容システムは,免疫の恒常性維持に必須で,自己免疫疾患などの発症抑制に重要な役割を果たしている.この免疫寛容を司る主な細胞に,制御性T細胞(Treg細胞)と免疫寛容樹状細胞(tDC)がある.現在,自己免疫疾患の患者の多くが,免疫抑制剤の治療を受けているが,より選択的で副作用が少ない長期間寛解を維持できる治療の研究がすすめられており,自己反応性T細胞を標的とした免疫寛容を導くTreg細胞や樹状細胞を用いた抗原特異的な治療が注目されている.また,マウスの実験系では遺伝子治療もおこなわれているが,がんと違って,自己免疫疾患などの慢性炎症に対しては,より高い安全性が求められるため,現時点では遺伝子操作による治療の適応はない.このため,生理活性物質や薬剤を用いて,安全で安定性のあるTreg細胞やtDCの誘導の研究が盛んに行われている.tDCの誘導には,IL-10,TGF-β,デキサメサゾン,ラパマイシンなどにより誘導されるが,いずれも一長一短があり,臨床的に有効かは不明である.そこで我々は,生理活性脂質,核内受容体リガンド,キナーゼ阻害剤のライブラリーから,PPARアゴニストがヒトTreg細胞を,Cキナーゼ阻害剤がヒトtDCを効率よく誘導することを見出した.これらの細胞の特徴,誘導機序,安定性,動物実験によるin vivoでの効果,他の誘導物質との比較および抗原特異的Treg細胞の誘導能について発表する.
分子標的薬レビュー
  • 田中 良哉, 山岡 邦宏
    2013 年 36 巻 5 号 p. 324
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     関節リウマチ(RA)は代表的な自己免疫疾患である.病態形成には,多様な細胞内シグナル伝達を介する細胞の活性化・制御が関与するが,その代表が高エネルギーを生み出すリン酸化酵素キナーゼである.ヒトでは518のキナーゼが同定されるが,大部分のサイトカインシグナルはチロシンキナーゼを介して伝達され,殊にJak kinaseは分子標的として注目を集めている.Jak阻害薬トファシチニブは,RAに対する新規経口低分子量抗リウマチ薬として平成25年に承認された.グローバルで実施した6つの第3相試験でも,5または10 mgを2回経口投与する事により,MTX治療抵抗性症例,抗リウマチ薬未使用早期症例やTNF阻害薬抵抗性症例において,MTXとの併用あるいは単剤使用でも,TNF阻害薬と同等の迅速で強い臨床効果を示した.一方,有害事象は,感染症,肝機能値異常,脂質代謝異常,好中球減少,貧血等であるが,長期使用により悪性腫瘍発症の懸念などが議論され,欧州ではリスクとベネフィットのバランスの観点等から本薬剤は依然として未承認である.また,本薬剤以外にもJak3選択薬,Jak1/Jak2阻害薬,Jak1阻害薬などが臨床開発段階にある.なお,Syk阻害薬は開発中断されており,p38などのシグナル分子標的薬はいずれも開発中止となった.リンパ球シグナル分子標的薬は内服可能な低分子化合物で,生物学的製剤と同等の高い臨床効果が示され,かつ,安全性が確立されれば,新たな治療変革に繋がるものと期待される.
  • 山中 寿
    2013 年 36 巻 5 号 p. 325
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     病態において中心的な働きをする特定の蛋白を抗体や受容体融合蛋白などの分子標的薬を用いて制御する試みは,関節リウマチ(RA)をはじめとする一連の慢性炎症性疾患の治療を一変させた.特にTNFやIL-6のような炎症性サイトカインに対する抗体や受容体融合蛋白による治療は,たぶん当初の予想を上回る成果を上げたと言える.その理由としていくつかを列挙すると,(1)抗体や受容体は標的分子にきわめて特異的に作用し,その他の蛋白とは結合しない,(2)抗体や受容体は高分子であり細胞外でのみ作用する,(3)TNFやIL-6がサイトカインネットワークの中心的役割を演じている,などを指摘することができる.抗体や受容体融合蛋白が選択的に標的分子に,それも細胞外で結合して作用することは,これらの薬剤の安全性を大いに高めたと考えられる.RA治療薬としての抗TNF製剤InfliximabやEtanercept,抗IL-6受容体製剤Tocilizumabの成功は,強直性脊椎炎,乾癬,炎症性腸疾患,ベーチェット病をはじめとする炎症性サイトカインが中心的病態を形成する疾患に応用され,高い有効性と安全性が確認された.現在,多くのサイトカインや受容体を標的とした薬剤が開発中である.現在までの抗体製剤,受容体融合蛋白製剤の臨床成績を総括するとともに,今後有望と思われる新規分子標的について解説する.
  • 髙崎 芳成
    2013 年 36 巻 5 号 p. 326
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
ミニレクチャー
  • 山村 隆
    2013 年 36 巻 5 号 p. 327
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     「臨床免疫学(Clinical Immunology)」は,分子標的医薬の発展やヒト病態解析法の進歩などによって,まさに新しい時代を迎えようとしている.さまざまな背景を持つ研究者・医師が集い,「免疫学」という共通言語で語り合えるプラットフォームとして,「臨床免疫学」の果たすべき役割は大きい.治療法の確立していない免疫系難病に対する治療法の開発,患者個性を反映したテイラーメイド医療の実現,さらには免疫疾患発症リスクを有する未発症例に対する予防医学の開発など,臨床免疫学のカバーする領域は広大である.本講演では神経系自己免疫疾患である多発性硬化症(MS)や視神経脊髄炎(NMO)に対して,我々が進めて来た臨床免疫学的なアプローチの経験と成果を紹介する.特にNMOに対する抗IL-6受容体抗体療法(Chihara et al. PNAS 2011; Araki et al. Mod Rheumatol 2012),MSに対するアカデミア発の新規治療薬OCH(Miyamoto et al. Nature 2001)の医師主導治験など,希少疾患に対するトランスレーショナル研究において,我々が悪戦苦闘をしながらも前進している状況を紹介する.
  • 廣畑 俊成
    2013 年 36 巻 5 号 p. 328
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     ベーチェット病の難治性病態の一つであるぶどう膜炎は,重篤な機能障害を残し,患者のQOLを著しく低下させるが,近年インフリキシマブが優れた治療効果をあげている.特殊病型である血管ベーチェット病,神経ベーチェット病,腸管ベーチェット病はいずれも患者の生命予後を左右する難治性病態である.血管ベーチェット病に対するインフリキシマブの使用は,インフリキシマブに血栓誘発作用が報告されているため積極的には推奨されない.神経ベーチェット病は急性型と慢性進行型に分けられる.急性型では治療の中心はステロイドである.急性型の発作予防には,コルヒチンや少量のステロイドなどが使われている.慢性進行型神経ベーチェット病では,認知症様の精神神経症状や失調性歩行が徐々に進行し,患者はついには廃人同様になってしまう.この病型では,髄液中のIL-6が持続的に異常高値を示すのが大きな特徴である.慢性進行型に対してはステロイド,シクロフォスファミド,アザチオプリンはいずれも無効で,メトトレキサートの少量パルス療法が有効である.また,最近,インフリキシマブによる治療が有効であることが明らかになった.インフリキシマブ.腸管ベーチェット病に対してもインフリキシマブの有用性を示す報告が増加しているが,同じTNF阻害薬のアダリムマブが最近保険で認可された.今後は,トシリズマブなどの他の生物製剤の治療効果についても検討してゆく必要があろう.
ワークショップ
  • 湯之上 直樹, 中山田 真吾, 久保 智史, 好川 真以子, 齋藤 和義, 田中 良哉
    2013 年 36 巻 5 号 p. 329a
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    【背景】濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞は,B細胞機能を制御する新規サブセットであるが分化機序と自己免疫疾患での病的意義は不明である.【方法】健常人末梢血からnaive CD4+T細胞を抽出し,TCRとサイトカイン刺激下で培養後,細胞表現型をFCMで解析した.健常人,SLE患者から採取したPBMCでのT細胞サブセットを評価した.【結果】IL-12とIFN-γはCXCR5+CXCR3+Bcl6+T-bet+かつIL-21を産生するTfh/Th1様の表現型を誘導し,両サイトカインは相乗的な誘導効果を示した.IL-21は,IFN-γを高産生する細胞(IL-21lo IFN-γhi : Th1)よりもIFN-γを中等度産生する細胞(IL-21int IFN-γint : Tfh/Th1)から高度に産生された.さらに,Tfh/Th1様細胞ではSTAT1とSTAT4の恒常的なリン酸化を認めた.活動期のSLE患者ではTh1細胞の割合が減少傾向である一方,活性化したTfh細胞が有意に増加しており,両者の形質を有するTfh/Th1(CD4+CXCR5+CXCR3+)細胞が認められた.【結論】Tfh細胞とTh1細胞はIFN-γ-STAT1経路とIL-12-STAT4経路を介して,その分化経路を共有しており,SLE患者において可塑性を有するTfh/Th1細胞が存在し病態形成に関与する可能性が示唆された.
  • 瀬理 祐, 庄田 宏文, 鈴木 亜香里, 藤尾 圭志, 松本 功, 住田 孝之, 山本 一彦
    2013 年 36 巻 5 号 p. 329b
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     Padi4は関節リウマチ(RA)の疾患感受性遺伝子の一つで,RAの疾患感受性ハプロタイプは非感受性ハプロタイプに比してmRNAの安定性の増加も報告されている.そして,Padi4にコードされた蛋白PAD4は脱イミノ化/シトルリン化といった様々な蛋白のアルギニンをシトルリンに変換する転写後翻訳能を有する.最近,抗CCP抗体が陰性のRA患者でもPadi4の疾患感受性ハプロタイプの存在がリスク因子であることが報告され,従来より考えられていたシトルリン化抗原の過剰産生とこれに伴う抗シトルリン化ペプチド抗体の産生以外の様々な免疫学的な変化が示唆された.また,最近のマウスの各種細胞での網羅的な遺伝子発現を検討した報告で,Padi4は骨髄,顆粒球系に限定した発現が示唆されている.Padi4 knockout (KO) DBA1/Jマウスでrecombinant human Glucose-6-Phosphate Isomerase (rhGPI)誘導性関節炎を用いてPadi4の機能解析を行った.Padi4 KOマウスでは関節炎の発症率は同等だが重症度の改善を認め,免疫後のTh17の低下を認めるが,その他のT細胞サブセット等に差を認めず,抗体産生や免疫後早期の炎症性サイトカインの発現等も著明な差を認めなかった.しかし,免疫後のミエロイド系細胞を検討したところ,骨髄での増殖は差を認めないが,脾臓,関節で著明な低下を認めた.以上よりPadi4が高発現であるミエロイド系細胞の変化を筆頭に,免疫応答の様々なレベルにおけるPadi4の関与が考慮された.
  • 三枝 慶一郎, 半田 一己, 筋野 智久, 三上 洋平, 竹下 梢, 水野 慎大, 林 篤史, 佐藤 俊朗, 松岡 克善, 久松 理一, 金 ...
    2013 年 36 巻 5 号 p. 330a
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     背景:我々はnaiveT細胞から直接分化するclassical Th1細胞(cTh1)とは異なるTh17細胞からTh17/Th1細胞を介し分化する腸炎惹起性alternative Th1細胞(aTh1)の存在を明らかにした.しかしcTh1細胞の腸炎惹起能は未だ不明であり,cTh1細胞の腸炎惹起性の有無とそのメカニズムについて検討した.方法:RORγt欠損マウス脾臓naiveT細胞(Ly5.1),野生型マウス脾臓naiveT細胞(Ly5.1)をRAG-2欠損マウスに各々移入,もしくは共移入した(Ly5.2-RAG,Ly5.1-RAG,Ly5.1/Ly5.2-RAG).また,in vitroで誘導したRORγt欠損Th1細胞をRAG-2欠損マウスに移入した.結果:Ly5.2-RAGは腸炎を発症せず少量のTh1細胞を認めるのみだったが,Ly5.1-RAG,Ly5.1/Ly5.2-RAGではTh1細胞の著明な増加を伴う腸炎を発症した.驚いたことに,Ly5.1/Ly5.2-RAGではLy5.1分画に加え,Ly5.2分画においてもTh1細胞の増加を認めた.さらにそのLy5.2分画を新たにRAG-2欠損マウスに移入したところ腸炎の発症を認めた.また,in vitroで誘導したRORγt欠損Th1細胞は野生型Th1細胞と同様に腸炎を発症した.結論:RORγt陽性細胞からの刺激が,RORγt非依存的cTh1細胞の腸炎惹起性獲得に重要である可能性が示唆された.
  • 高原 政宏, 根本 泰宏, 松沢 優, 小林 正典, 前屋舗 千明, 仁部 洋一, 大島 茂, 渡辺 守
    2013 年 36 巻 5 号 p. 330b
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    【背景】我々は緩解期においても生体内に長期生存する腸炎惹起性メモリーCD4+T細胞が炎症性腸疾患難治性の要因であり,真の治療標的であることを報告してきた.メモリーT細胞には複数の分画があり,近年,幹細胞様の性質を有するMemory Stem Cell (TSCM)が同定されている.【目的,方法】炎症性腸疾患モデルマウスにおける既存のメモリーT細胞分画の役割を明確にすると共に“腸炎惹起性memory stem cell”の存在を検証した.【結果】CD4+CD45RBhighT細胞移入腸炎マウスでは脾臓,リンパ節において数%のCentral memory (TCM)と多数のEffector memory (TEM)を認め,TSCMの分画は認めなかった.このためTEM/TCMを分取し,腸炎誘導能を検証したところ,同等な腸炎を発症した.以上からこの腸炎モデルマウスでは,TEMは長期生存能を有する分画を含むと考えた.次に,我々はメモリーT細胞維持因子のIL-7に着目し,in vitroで,TEM細胞から生存能の高い細胞集団の同定を試みた.腸炎マウス大腸炎粘膜のCD4+T細胞をIL-7単独添加で培養したところ,4週間培養可能であった.培養後の細胞は,Bcl-2,CD25,腸管へのhoming markerを高発現し,in vitroにおけるサイトカイン産生能はTCMに類似していた.IL-7単独で4週培養した細胞と8週培養した細胞では後者の方が,腸炎誘導能が強かった.【結語】IL-7単独添加による新規培養法を樹立し,生存能/腸炎誘導能の高い新たなメモリーサブセットを同定した.
  • 江里 俊樹, 川畑 仁人, 今村 充, 神崎 健仁, 赤平 理紗, 道下 和也, 土肥 眞, 徳久 剛史, 山本 一彦
    2013 年 36 巻 5 号 p. 331a
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     抗核抗体は,全身性エリテマトーデスを始めとする種々の全身性自己免疫疾患の主要な特徴の一つであるが,その産生メカニズムは明らかではない.過去の報告によると,胸腺を欠いたヌードマウスでは抗核抗体産生とループス様の自己免疫が見られ,ヌードマウスにCD4+CD25−細胞を移入するモデルでは様々な自己抗体産生と臓器特異的自己免疫が見られる.我々はこれらのマウスモデルを用いて,lymphopenia-induced proliferation (LIP)を介した移入T細胞のfollicular helper T細胞(TFH)への分化,および腸内細菌の関与,という観点から抗核抗体産生について検討した.BALB/c野生型マウスからCD4+CD25−(conventional T)細胞を移入したBALB/cヌードマウスでは,IgG型抗核抗体を始めとする様々な自己抗体産生が早期に高率に見られた.移入されたconventional T細胞はLIPによってIL-21産生PD-1+TFH細胞へと分化し,germinal center形成と異常なB細胞応答を引き起こすことが観察された.さらに経口広域抗生剤投与によって腸内細菌を除去すると,LIPを介したTFH細胞分化の減少と,自己抗体産生の低下が見られた.腸内細菌が抗核抗体産生に重要な役割を果たしているという今回の新たな発見は,全身性自己免疫疾患の病態解明と新たな治療へつながる可能性がある.
  • 佐々木 貴史, 塩濱 愛子, 久保 亮治, 川崎 洋, 山本 明美, 山田 健人, 蜂矢 隆久, 清水 厚志, 岡野 栄之, 工藤 純, 天 ...
    2013 年 36 巻 5 号 p. 331b
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     皮膚バリア主要構成成分フィラグリン(FLG)の遺伝子変異は,アトピー性皮膚炎(AD)の発症因子であることが報告された.Flaky tailマウスは体毛異常を示すma変異マウスコロニーから自然発生したマウスで,皮膚炎を自然発症すること,Flg変異(Flgft)を有することからADモデルとして広く使われている.我々が作製したFlg KOは皮膚炎を自然発症しないことから,Flgftとmaを分離した結果,ma/maマウスだけが皮膚炎を自然発症した.ma責任領域を次世代シーケンサーで解読した結果,Matted遺伝子にナンセンス変異を同定した.そのMatted遺伝子をma/maマウスに発現させたところ皮膚炎を発症しないことから,Matted遺伝子が原因遺伝子であると同定した.Matted mRNAは皮膚に発現し,Mattedタンパクは表皮顆粒層細胞質内に網目状に局在した.Mattedタンパクの細胞内局在は細胞内小胞輸送に関与するTrans-Golgi networkのマーカータンパクと最も一致した.ma/maマウスでは小胞輸送により細胞外分泌される角質層形成タンパク群が減少し,角層剥離異常を認めた.以上の結果から,ma/maマウスの自然発症皮膚炎はMatted遺伝子の欠損が原因であり,この結果は皮膚バリア異常と皮膚炎発症のメカニズムを解明する重要な手がかりとなると考えられる.
  • 佐藤 実, 田中 晋, 唐崎 裕治
    2013 年 36 巻 5 号 p. 332
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     全身性自己免疫疾患は特異自己抗体の産生が特徴である.これら自己抗体は臨床症状に先行して産生され,多くは特定の疾患,あるいは臨床症状と密接に関連し疾患の診断,治療,経過観察に有用なバイオマーカーである.自己抗体の産生および自己免疫疾患の発症は環境因子と遺伝因子の相互作用により起こると考えられている.環境因子は微生物,薬剤,環境汚染物質,気候,食物など多彩であり,動物モデルとして確立されているものもあるが,多くにおいてはその自己抗体産生,病態への関与の機序は明確でない.細胞内の数千の抗原の中から,限られたいくつかの分子がそれぞれの患者の自己抗体の標的として選ばれる機序は不明であるが,自己抗原の量的,あるいは質的異常が特異自己抗体産生の誘因となる可能性も示唆されている.化学物質,薬剤による特定の分子の修飾,紫外線などの環境因子による自己抗原発現量の変化と自己抗体産生との関連が実際に示されている例もあり,特異自己抗体の産生機序は今後さらなる研究が必要な領域である.
  • 佐藤 慎二
    2013 年 36 巻 5 号 p. 333
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     多発性筋炎/皮膚筋炎(Polymyositis/Dermatomyositis : PM/DM)患者血清中には,これまで様々な自己細胞成分中に対する抗体が見出されている.特に,抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体(抗ARS抗体),抗Mi-2抗体,抗Signal recognition particle抗体(抗SRP抗体)などが広く知られているが,近年の自己抗体研究の進歩により,PM/DMに特異的に見出される新たな自己抗体がいくつか報告された.それらは,悪性腫瘍合併DMと関連する抗p155/140(TIF-1γ)抗体,主に小児DMで見出される抗p140/NXP-2抗体,急速進行性間質性肺炎と関連する抗CADM-140/MDA5抗体などである.これら自己抗体の対応抗原の多くは同定されており,生命現象を維持する上で重要な機能をもつ必須酵素や調節因子などであることが知られている.PM/DMの発症原因は未だに不明であるが,その発症に自己免疫現象が深く関わっていることが想定されており,自己抗体とその対応抗原(自己抗原)の分子構造と生物学的機能の追究が,自己抗体産機序・病態解明につながることが期待されている.
  • 楠 進
    2013 年 36 巻 5 号 p. 334
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     免疫性末梢神経疾患では,しばしば自己抗体がみられる.ガングリオシドを含む糖脂質や糖タンパクの糖鎖を認識する抗体は,ギラン・バレー症候群(GBS)とその亜型,およびIgM M蛋白を伴うニューロパチー(IgM-N)で高頻度にみられる.GM1,GalNAc-GD1a等に対する抗体は,純粋運動型あるいは軸索障害型のGBSにみられる.大型の一次感覚ニューロンに局在するGD1bに特異的な抗体は運動失調を伴うGBSにみられる.GQ1b抗体は,GBS亜型のFisher症候群,Bickerstaff型脳幹脳炎や,眼球運動麻痺を伴うGBSにみられ,GQ1bの局在する脳神経III,IV,VIの傍絞輪部や一部の一次感覚ニューロン,神経筋接合部等を標的とする.末梢神経ミエリンに局在するLM1に対する抗体は,脱髄型GBSにみられる.また二種類のガングリオシドの糖鎖が形成するガングリオシド複合体に対する抗体がみられる症例もある.IgM-Nでは,myelin-associated glycoproteinや糖脂質のSGPGに反応するIgM M蛋白を伴うことが多い.糖鎖に対する抗体は,標的抗原の局在部位に特異的に結合して臨床病型を決定する.一方,糖鎖以外に対する抗体としては,傍腫瘍性ニューロパチーにみられるHu抗体やCV2抗体,自己免疫性自律神経障害性ニューロパチーにおけるganglionic acetylcholine receptorに対する抗体等が知られる.これら自己抗体の検討で得られた知見がテーラーメード医療を含む新規治療戦略の構築につながることが期待される.
  • 天谷 雅行
    2013 年 36 巻 5 号 p. 335
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     天疱瘡は,デスモグレイン1,3(Dsg1,Dsg3)に対する自己抗体によって生じる自己免疫疾患である.同一患者の経過の中で,抗体価と病勢は平行して推移する.しかし,異なる患者間で,抗体価は重症度と必ずしも相関しない.患者毎に,デスモグレイン分子上のエピトープが異なるためである.細胞接着活性上重要な部位を認識する抗体は,効率よく水疱を形成し,高い病的活性を示す.近年,患者末梢血より,ファージライブラリーを作成し,一本鎖モノクローナル抗体が単離されるようになり,さらに詳細に病的活性とエピトープの関係が明らかになってきた.さらに,得られた病的モノクローナル抗体の多くは,デスモグレイン分子のN末にある接着面を認識し,抗体のCDR3領域の配列に,D/E-X-X-X-Wという共通の配列を有することが明らかになった.このことにより,病的活性を示すモノクローナル抗体は,デスモグレイン分子の接着面を形成するtryptophan acceptor siteに結合し,接着傷害を起こしていることが推察された.また,Dsgは,細胞内の小胞体で前駆体(preDsg)として生成され,細胞表面に運ばれる間にプロペプチドがはずれて成熟タンパク(matDsg)となる.チュニジアに見られる風土病型落葉状天疱瘡において,健常人からpreDsg1に対する自己抗体が検出されることが示され,発症前段階における病態解明の手がかりとなることが期待されている.
  • 松本 雅則
    2013 年 36 巻 5 号 p. 336
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は,全身の微小血管に血小板血栓が形成される疾患であり,血小板減少,溶血性貧血,腎障害,発熱,精神神経症状の古典的5徴候で知られている.長く原因不明であったが,1998年にvon Willebrand因子(VWF)切断酵素であるADAMTS13活性が著減することで,TTPが発症することが報告された.VWFは,その分子量が大きいほど血小板との結合能が強い.血液中への産生直後は,非常に大きな分子量で血小板血栓を作る危険性が高いため,ADAMTS13によって適度な大きさの分子量に制御されている.ADAMTS13活性が著減する機序として,遺伝的にADAMTS13活性が著減する場合(先天性TTP)と,ADAMTS13に対する自己抗体が産生される場合(後天性TTP)が存在する.ADAMTS13自己抗体には,活性中和抗体(インヒビター)と非中和抗体が存在するが,臨床現場で用いられるのはインヒビターである.国内での我々の検討では,ADAMTS13活性著減後天性TTP186例でインヒビター陽性率は99%であった.後天性TTPはこのように自己免疫疾患であるが,自己抗体の産生は一時的なものであり,血漿交換などの治療により寛解となれば,2/3の症例は再発しないと報告されている.後天性TTPの病態解析が進んだことで,血漿交換やリツキシマブなどの治療効果が説明可能となった.今後,さらなる後天性TTPの治療成績の改善のためには,ADAMTS13自己抗体の産生機序を詳細に解析することが重要である.
  • 藤木 文博, 林 ユウ宏, 勝原 晶子, 岡 芳弘, 坪井 昭博, 青山 奈央, 谷井 里江, 中島 博子, 森本 創世子, 保仙 直毅, ...
    2013 年 36 巻 5 号 p. 337
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     癌抗原であるWT1は白血病や固形癌などに高発現しており,WT1を標的とした癌免疫療法が世界中で行われている.理想的な抗腫瘍免疫応答の惹起には,癌抗原特異的CD4+T細胞を誘導することが望ましいことから,我々は,多数のHLA class II分子に結合し特異的なCD4+T細胞を誘導することの出来るWT1由来ヘルパーペプチドであるWT1332特異的CD4+T細胞由来のTCR遺伝子の単離とそのTCR遺伝子を導入されたCD4+T細胞の機能解析を行った.日本人の約60%にみられるHLA-DPB1*05 : 01拘束性WT1332特異的CD4+T細胞クローンよりTCR遺伝子を単離し,レンチウイルスベクターを用いて健常人CD4+T細胞に遺伝子導入した.そのCD4+T細胞はWT1332特異的な増殖能・Th1サイトカイン産生能を示し,その特異性は長期間安定であった.さらに,このTCRを導入されたCD4+T細胞をautologous PBMC(HLA-A*24 : 02陽性,HLA-DPB1*05 : 01陽性)とともにHLA-A*24 : 02拘束性WT1由来CTLエピトープおよびWT1332存在下で培養することで,WT1特異的CTLの誘導が顕著に増強された.また,このTCRを導入されたCD4+T細胞はパーフォリン/グランザイムB経路を用いてWT1特異的かつHLA-DPB1*05 : 01拘束性に白血病細胞を直接傷害した.以上より,我々が単離したWT1332特異的TCR遺伝子を導入することでCD4+T細胞に抗原特異性を付与することが可能であり,この手法を用いて詳細な抗腫瘍免疫応答におけるCD4+T細胞の機能解析を行うことが出来ると思われる.
  • 横田 和浩, 佐藤 浩二郎, 三由 文彦, 荒木 靖人, 秋山 雄次, 三村 俊英
    2013 年 36 巻 5 号 p. 338
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     関節リウマチ(RA)は罹患関節滑膜において,破骨細胞が炎症性サイトカインにより活性化することで関節破壊を惹起している.特にTNFα,IL-6はRAの病態に中心的な役割を演じていると報告されている.そこで両サイトカインを組み合わせて,破骨細胞分化への影響を調べた.マウス破骨細胞前駆細胞を用いてTNFα+IL-6で刺激した結果,RANKL非依存的に酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)染色陽性である多核の破骨細胞様細胞が誘導された.また,RANKL誘導性破骨細胞と同様に破骨細胞様細胞は骨吸収能を有していた.この細胞の分化過程で,転写因子c-FosおよびNFATc1の誘導が認められ,その分化はNFAT阻害剤,JAK阻害剤で阻害され,抗IL-1β抗体で阻害されなかった.興味深いことにマクロファージ特異的Stat3欠損マウスと対照マウスの比較では,TNFα+IL-6で誘導された破骨細胞様細胞数に差は認めなかった.一方,MEK/ERK阻害剤はRANKL誘導性破骨細胞と比較し,破骨細胞様細胞の分化を抑制した.このことはJAK-MEK/ERKシグナルによる破骨細胞様細胞の分化制御を示唆している.さらにマウス頭部皮下へのTNFα+IL-6の投与において,頭蓋骨にTRAP染色陽性細胞数の増加と骨吸収の促進が確認された.これらの結果から,炎症性サイトカインのTNFαとIL-6により破骨細胞様細胞が誘導され,RA関節滑膜での炎症性骨破壊に関与している可能性が示唆された.
  • 門脇 淳, 三宅 幸子, 千葉 麻子, 山村 隆
    2013 年 36 巻 5 号 p. 339
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
     腸管は最大の免疫組織であり,腸管免疫と自己免疫の関与が注目されている.
     まず我々は,MOG反応性のT細胞受容体トランスジェニック(2D2)マウスを用い,腸管リンパ球の解析を行った.2D2マウスの小腸上皮内リンパ球(intraepithelial lymphocytes : IEL)には,2D2 TCRの発現が高い細胞集団(TIEL-H)と発現がやや低い集団(TIEL-L)の二つの細胞集団が存在し,各々CD2+CD5+induced IEL,CD2CD5natural IELの性質を有していた.TIEL-H細胞,TIEL-L細胞を移入後,MOGによりEAEを誘導すると,TIEL-H細胞移入群でのみ病態が軽症化した.TIEL-H細胞移入群では,中枢神経系へのTIEL-H細胞の浸潤がみられ,Lag3などの免疫制御性分子の発現が上昇していた.TIEL-H細胞は,in vitroでeffector T細胞の増殖を抑制し,抑制にはLAG3,CTLA-4,TGFβが関与することが明らかとなった.KRNマウスにおいてもKRN TCRを発現するTIEL-H細胞は,in vitroでeffector T細胞の増殖を抑制した.
     これらの結果から,自己反応性T細胞は,腸管において制御性T細胞の性質を獲得し,自己免疫制御に関与することが示唆された.
  • 長谷川 久紀, 溝口 史高, 沖山 奈緒子, 東 みゆき, 宮坂 信之, 上阪 等
    2013 年 36 巻 5 号 p. 340a
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    【目的】多発性筋炎(PM)は,細胞傷害性CD8T細胞による筋傷害が基本病態と推定されている.CD28-CD80/86補助刺激を阻害してT細胞応答を抑制するCTLA-4 Ig(アバタセプト)は,CD4T細胞応答を抑制するが,CD8T細胞応答は抑制しないとされてきた.我々は,CD8T細胞により筋傷害が生じるマウス筋炎モデルにおいてCTLA-4 Ig,抗CD80/86抗体の効果を評価し,CD28阻害が抗原特異的なCD8T細胞応答を抑制するか否かを検証した.
    【方法】PMモデルであるC蛋白誘導性筋炎(CIM)マウスに対して,筋炎発症後の免疫7日目よりCTLA-4 Ig(アバタセプト),又は抗CD80抗体と抗CD86抗体とを併用投与し,21日目に筋組織を評価した.C蛋白のCD8T細胞エピトープをパルスした樹状細胞(DC)が誘導する筋炎(CPIM)マウスに,DC移入日からCTLA-4 Igを投与し,7日目に筋組織を評価した.
    【結果】CIMとCPIMの組織学的スコアは,CTLA-4 Ig投与群が共に対照群と比較して有意に低かった.同様に,抗CD80/86抗体投与群のCIMの組織学的スコアも対照群より有意に低かった.
    【考察】CD28阻害によりCPIMが改善したことは,CD4T細胞抑制を介さずCD8T細胞応答が直接抑制されたことを示唆する.CIMが改善した点と加味し,CD28阻害は,CD4T細胞に加え,CD8T細胞応答も抑制することから,PMに有効な新規治療法と期待される.
  • 綾野 雅宏, 塚本 浩, 押領司 大助, 廣崎 友里, 植木 尚子, 上田 彰, 久本 仁美, 大田 俊一郎, 田中 淳, 上田 尚靖, 木 ...
    2013 年 36 巻 5 号 p. 340b
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    【背景】以前我々は全身性強皮症(SSc)患者と健常者(HC)の末梢血リンパ球亜分画から抽出したRNAを用いた網羅的遺伝子発現解析にて,SSc患者CD8+エフェクターメモリーT細胞でDNAM-1の発現が亢進していることを見出した.DNAM-1はSScなど多くの自己免疫疾患における疾患感受性遺伝子として注目されている.【目的】SSc患者末梢血リンパ球上のDNAM-1の発現を解析し,SSc病態との関連を明らかにする.【方法】SSc 34例とHC 21例について末梢血リンパ球上のDNAM-1の発現をフローサイトメトリー(FCM)にて測定した.末梢血CD8+T細胞を刺激後,DNAM-1陽性および陰性細胞における各種サイトカイン産生をFCMにて比較した.末梢血CD8+T細胞をヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)と,抗DNAM-1阻害抗体存在下または非存在下にて共培養し細胞傷害活性を測定した.【成績】SSc患者CD8+T細胞ではDNAM-1brightの割合(SSc 52.6%,HC 33.3%)およびDNAM-1発現量が有意に高かった.DNAM-1発現量はびまん型SScおよび間質性肺炎合併SScで高く,スキンスコアと正の相関,%VCと負の相関を認めた.刺激実験ではDNAM-1陽性CD8+T細胞でIL-13産生が有意に多かった.CD8+T細胞とHUVECの共培養に抗DNAM-1阻害抗体を加えるとHUVECの細胞死が部分的に抑制された.【結論】SSc患者CD8+T細胞ではDNAM-1の発現が亢進しており,血管内皮細胞傷害や向線維化サイトカインIL-13産生を介してSScの病態に関与している.
  • 相葉 佳洋, 小森 敦正, 伊東 正博, 右田 清志, 八橋 弘, 中村 稔
    2013 年 36 巻 5 号 p. 341a
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】我々は,日本人原発性胆汁性肝硬変(PBC)の新規疾患感受性遺伝子としてTNFSF15(TL1A)を同定した.また,日本人PBC患者の血中・肝局所においてTL1Aの発現が上昇していること,肝局所におけるTL1A陽性細胞が胆管細胞,血管,クッパー細胞,浸潤単核球であることを明らかにした.今回,ヒト肝内胆管上皮細胞(HIBEC)におけるTL1A産生機構の解析をおこなった.【方法】HIBECを炎症性サイトカイン,TLRリガンドで刺激し,TL1A発現をELISAまたは定量PCRにより測定した.TL1A産生機構を各種阻害剤(MAPK阻害剤,TAPI-1,siRNA)を用いて検討した.【結果】HIBECにおいてTL1Aは恒常的に発現しており,可溶型TL1AはTL1A誘導因子として報告されているTNF-α,IL-1β,LPS刺激で増加しなかったが,polyI:C刺激により増加した.polyI:Cによる可溶型TL1A産生は,MAPK阻害剤(SB202190,PD98059)により阻害されなかったが,TAPI-1,MAVS siRNAにより阻害された.また,このTL1A産生機構は,PBC疾患感受性遺伝子で小胞体ストレス応答に関与するORMDL3非依存的であった.【結論】胆管上皮細胞における可溶型TL1A産生機構に,RIG-I/MDA-5経路を介したTL1AのEctodomain sheddingが関与していることが示唆された.このTL1A産生機構が,PBCの病態形成に関与して可能性が考えられた.
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