日本臨床免疫学会会誌
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合同シンポジウム
合同シンポジウム2-1  原発性免疫不全症候群から学ぶHuman Immunology
森尾 友宏高木 正稔水谷 修紀今井 耕輔
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2013 年 36 巻 5 号 p. 309

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抄録
 原発性免疫不全症候群(Primary immunodeficiency : PID)は自然免疫系あるいは獲得免疫系に関与する分子の異常によって発症する免疫異常症である.その主たる症状は「易感染性」であり,典型的には患者は,幼小児期より,反復感染症,重症感染症や日和見感染症などに罹患する.一方,PIDは「易感染性」のみを示すのではなく,自己免疫疾患,血球減少,悪性腫瘍が主たる問題となる疾患もある.多彩な疾患群を含んでおり,現在のところ200前後の疾患があり,240以上の責任遺伝子が明らかになっている.PIDはexperiment of natureと呼称され,その解析により例えば,BTK,CD154(CD40L),CD278(ICOS),STAT1,STAT3など様々な分子の,ヒトにおける機能や重要性が明らかになり,問題となる免疫担当細胞の免疫系における役割が解明されてきた.PIDの解析は従って,ヒト免疫の分子的背景の理解と,治療法の開発に向けて有用な情報を提供していると言える.以前から知られていた分子異常においても,その分子の新たな機能が次々と明らかになっている状況である.ここではその中からいくつかの重要な研究を取り上げ,PID研究のヒト免疫研究における役割と,今後の研究の展望について紹介したい.
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© 2013 日本臨床免疫学会
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