抄録
ぶどう膜炎とは,狭義には「ぶどう膜組織の炎症」であるが,臨床的には「眼内の全ての炎症」を指す.ぶどう膜炎は単一疾患ではなく,自己免疫疾患,感染症,造血器悪性腫瘍など多種多様な原因や背景をもとに発症する.ぶどう膜炎の多くは再発する可能性のある慢性病であり,姑息的に眼炎症をコントロールするだけでなく,長期的観点から患者の視機能を考える必要がある.
眼ベーチェット病は,放置すれば中途失明に至る重篤な全身疾患である.コルヒチン・シクロスポリンを中心とした従来の治療に多くの患者が抵抗性で,視機能予後の悪いぶどう膜炎の代表格であった.2007年から抗TNFα治療が始まり,生物製剤によって眼発作回数が激減し,患者が失明の恐怖から解放されたと言っても過言ではない.今後,二次無効や中止時期の問題などの課題もあるが,治療に大きな変革をもたらしている.
現在ベーチェット病以外のぶどう膜炎では生物製剤の使用が認められていない.しかし遷延化したVogt-小柳-原田病やサルコイドーシスの患者では副腎皮質ステロイドでの治療が難しく新たな治療が求められている.ぶどう膜炎治療における今後の展望について,自験例を交えながら考察してみたい.