日本臨床免疫学会会誌
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合同シンポジウム
合同シンポジウム3-1  ヒト腸内細菌叢の多様性と解析法の進歩
服部 正平
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2013 年 36 巻 5 号 p. 314

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抄録
 人体には無数の細菌が棲んでいる.この細菌の集団(常在菌叢)を構成する細菌の種類は1,000種以上で,その総数はヒト細胞よりも1桁多く数百兆個と見積もられている.その中で腸内細菌叢はもっとも多様で多数の細菌種から構成される.腸内細菌叢は宿主の健康や恒常性の維持に働く一方で,自己免疫疾患や肥満,糖尿病などのさまざまな疾患にも密接に関係する.このことから,ヒトはヒトゲノムとヒト常在菌叢ゲノム(ヒトマイクロバイオーム)から成り立つ「超有機体」であると考えることができる(Lederberg, J. : Science, 2000).近年におけるDNAシークエンサーの革新的進歩は,この複雑で多様性に富んだ腸内を含めたヒト常在菌叢の実体解明を可能にした.とくに,細菌叢の16SリボソームRNA遺伝子やメタゲノム解析,分離株の個別細菌ゲノム解析,これらの大量データを解析するバイオインフォマティクスを用いたゲノム科学的アプローチは,細菌叢構造の網羅的かつ定量的な評価ならびに疾患患者の細菌叢の特徴や関連する細菌種のピンポイントでの特定も可能にする.
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© 2013 日本臨床免疫学会
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