日本臨床免疫学会会誌
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分子標的薬レビュー
分子標的薬レビュー2  サイトカインおよび受容体標的薬
山中 寿
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2013 年 36 巻 5 号 p. 325

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抄録
 病態において中心的な働きをする特定の蛋白を抗体や受容体融合蛋白などの分子標的薬を用いて制御する試みは,関節リウマチ(RA)をはじめとする一連の慢性炎症性疾患の治療を一変させた.特にTNFやIL-6のような炎症性サイトカインに対する抗体や受容体融合蛋白による治療は,たぶん当初の予想を上回る成果を上げたと言える.その理由としていくつかを列挙すると,(1)抗体や受容体は標的分子にきわめて特異的に作用し,その他の蛋白とは結合しない,(2)抗体や受容体は高分子であり細胞外でのみ作用する,(3)TNFやIL-6がサイトカインネットワークの中心的役割を演じている,などを指摘することができる.抗体や受容体融合蛋白が選択的に標的分子に,それも細胞外で結合して作用することは,これらの薬剤の安全性を大いに高めたと考えられる.RA治療薬としての抗TNF製剤InfliximabやEtanercept,抗IL-6受容体製剤Tocilizumabの成功は,強直性脊椎炎,乾癬,炎症性腸疾患,ベーチェット病をはじめとする炎症性サイトカインが中心的病態を形成する疾患に応用され,高い有効性と安全性が確認された.現在,多くのサイトカインや受容体を標的とした薬剤が開発中である.現在までの抗体製剤,受容体融合蛋白製剤の臨床成績を総括するとともに,今後有望と思われる新規分子標的について解説する.
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© 2013 日本臨床免疫学会
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