抄録
「臨床免疫学(Clinical Immunology)」は,分子標的医薬の発展やヒト病態解析法の進歩などによって,まさに新しい時代を迎えようとしている.さまざまな背景を持つ研究者・医師が集い,「免疫学」という共通言語で語り合えるプラットフォームとして,「臨床免疫学」の果たすべき役割は大きい.治療法の確立していない免疫系難病に対する治療法の開発,患者個性を反映したテイラーメイド医療の実現,さらには免疫疾患発症リスクを有する未発症例に対する予防医学の開発など,臨床免疫学のカバーする領域は広大である.本講演では神経系自己免疫疾患である多発性硬化症(MS)や視神経脊髄炎(NMO)に対して,我々が進めて来た臨床免疫学的なアプローチの経験と成果を紹介する.特にNMOに対する抗IL-6受容体抗体療法(Chihara et al. PNAS 2011; Araki et al. Mod Rheumatol 2012),MSに対するアカデミア発の新規治療薬OCH(Miyamoto et al. Nature 2001)の医師主導治験など,希少疾患に対するトランスレーショナル研究において,我々が悪戦苦闘をしながらも前進している状況を紹介する.