抄録
38歳男性.主訴は発熱,呼吸困難.平成20年10月17日より40℃の発熱を認め,咳嗽,鼻汁も出現.24日に近医受診しセファゾリンの点滴を行ったが軽快せず,27日に同院に入院.炎症反応高値と胸部レントゲン上両側肺野にびまん性浸潤影を認め肺炎と診断.アジスロマイシン投与も軽快せず,低酸素血症が進行し精査加療目的で当院紹介入院.聴診上,両肺野で呼吸音の減弱を認め,触診上肝脾腫を認めた.検査所見では白血球11400/μl,ESR 83 mm/h,CRP 7.8 mg/dlと炎症所見を認め,sIL2-R 12400 U/ml,フェリチン2310 ng/mlと高値であった.レントゲン上両側肺野にびまん性網状影を認め,CTにて肝脾腫をみとめたが明らかなリンパ節腫脹を認めなかった.各種日和見感染マーカーは陰性であったがHIV抗体ELISA法で陽性であり,その後のHIVRNA定量3.9×105/ml,CD4 79 copy/μlで後天性免疫不全症候群(AIDS)と診断した.EBVは抗VCAIgG 160倍,抗VCAIgM(—),抗EA-DRIgG 160倍,EBNA 10倍であった.第1病日から加療開始も呼吸状態悪化し,ステロイドパルスを施行したが改善得られず第8病日死亡した.生前の骨髄穿刺所見,剖検時の所見で血球貪食症候群が証明され,EBVの抗体価よりEBVのreactivationが疑われ,さらにHIV感染も認める事より,それに伴うVAHSである事が疑われた.VAHSに伴う急性肺障害を認める事が報告されており,今回の症例はVAHSに伴うARDS/SIRSが死因であった可能性が示唆された.