日本臨床免疫学会会誌
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第41回総会ポスター賞受賞記念論文
炎症性疾患の病態におけるαEβ7(CD103)の関与
吉本 桂子倉沢 隆彦鈴木 勝也竹内 勤
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2014 年 37 巻 3 号 p. 171-175

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抄録

  インテグリンファミリーのαEβ7(CD103)はE-カドヘリンをリガンドに持ち,αEサブユニットとβ7サブユニットからなるヘテロダイマーである.αEβ7は腸管リンパ球に多く発現しているが,近年,腸管のみならず扁桃腺のリンパ球,あるいは制御性T細胞や樹状細胞でも発現していることが明らかになり,その免疫制御機構における役割が注目されている.αEβ7はE-カドヘリンとの結合を介し,腸管の免疫機構に大きく寄与していることが知られているが,αEβ7とE-カドヘリンの結合による細胞接着が炎症に伴う上皮組織傷害に関与している可能性が示唆されている.著者らはEC1~EC5ドメインからなるヒトE-カドヘリンにおいて,EC5がαEβ7との結合に必須であることと,αEβ7の発現機構にはtransforming growth factor-β1(TGF-β1)とSmadを介した経路が関与し,全身性エリテマトーデス(SLE)患者の末梢血リンパ球では健常人と比較してPHAによる著しく強いαEβ7の発現誘導が認められることを見出し,炎症性疾患においてはT細胞におけるαEβ7発現機構に異常がある可能性を示した.以上のことから,αEβ7とE-カドヘリンの結合を選択的に阻害する物質やαEβ7発現を抑制する物質が種々の炎症性自己免疫疾患の治療薬の標的分子の一つになりうると考えられる.

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© 2014 日本臨床免疫学会
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