抄録
我々は,皮膚粘膜卵白アルブミン発現(K14-mOVA)マウスが,1×106 OT-I細胞移入後にびらんを伴う皮膚粘膜症状を発症するマウスモデルを構築した.皮膚病理像では,GVHDなどの苔癬型反応に特徴的な液状変性を認める.活性化T細胞に発現するPD-1は免疫制御分子とされ,リガンド(PD-Ls:PD-L1/L2)は広範囲の細胞に発現する.GVHD様マウスモデルを用いPD-1-PD-Ls機構を解析した.
K14-mOVAマウスに野生型(WT)OT-I細胞移入しGVHD様症状が起こると,OT-I細胞は増殖活性化しPD-1を発現,リンパ節細胞はPD-Lsを,表皮細胞もPD-L1を発現する.K14-mOVAマウスは,WT OT-I細胞ではGVHD様症状を起こさない少数(5×104)のPD-1-KO OT-I細胞移入で発症した.以前我々は,K14-mOVA×OT-I DTgマウスでは,Fas-FasL機構を介しOT-I細胞を抑制するCD3+CD4−CD8− OT-I-TCR+細胞が増殖し,OT-I細胞移入に抵抗性であると報告した.しかし,Fas-KO OT-I細胞移入ではDTgマウスは発症せず,PD-1-KO OT-I細胞移入で発症した.以上より,PD-1は自己反応性CD8 T細胞制御性皮膚粘膜疾患の重要な抑制機構である.
一方,PD-L1を発現するK14-mOVA表皮細胞との共培養で,WT OT-I細胞は増殖活性化するが,OT-I細胞でのPD-1-KOは反応を促進した.加えて,PD-L1-siRNA移入K14-mOVA表皮細胞との共培養でも,WT OT-I細胞増殖は促進された.このことより,標的表皮細胞はPD-L1を介した自己防御機構を有すると示唆される.