抄録
【目的】造血幹細胞移植の生存率は向上しているが,移植後の日和見感染症は未だに大きな問題である.特にウイルス感染では抗ウイルス薬の副作用,有効な抗ウイルス薬の欠如などの問題がある.ウイルス特異的T細胞は,治療困難例に対して期待されている.ベイラー医科大学のLeenらは,オーバーラッピングペプチド(OLP)とサイトカイン(IL-4/IL-7)を用いて簡便に,またドナーのHLAに関わらずウイルス特異的T細胞を増幅できると報告した.私たちは対応ウイルスと培養法を改変し,特異的T細胞の増幅を試みた.【方法】7ウイルス15抗原:CMV(pp65, IE1),EBV(EBNA1, BZLF1, LMP2),ADV(Hexon, Penton),BKV(LT, VP1),JCV(LT, VP1),HHV6(U54, U90),VZV(IE62, IE63)のOLPにより末梢血単核球を刺激し,無血清培地(IL-4/IL-7添加)にて培養した.作成した細胞の表面抗原分析を行い,特異性はIFNγ産生能と細胞傷害活性測定にて検証した.【結果と考案】9-14日でT細胞が増幅され,全ての抗原に対する特異的T細胞が得られた.培養されたT細胞はドナーにより異なるがCD4T細胞優位であり,central memoryが主体であった.IFNγ産生能を示す特異的T細胞は有意に増幅した.CD4T細胞優位ではあったが,ドナーやウイルスによっては良好な細胞傷害性を示した.現在は得られた細胞のHLA拘束性について検証を進め,また造血細胞移植後日和見感染症に対するウイルス特異的T細胞治療の臨床試験を準備しているところである.