抄録
全身性のRenin-Angiotensin system(RAS)は体液保持などに関与するが,近年,腫瘍組織における局所性RASががんの生存・増殖に関与することが報告されている.本研究ではRASの腫瘍免疫における役割について検討した.マウス大腸癌担癌C57BL/6マウスに,アンジオテンシン受容体阻害薬(ARB)であるValsartanを投与すると,所属リンパ節での腫瘍抗原特異的T細胞の誘導を促進した.その機序として,ARBの投与が,腫瘍関連マクロファージ(TAM)や骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)からの免疫抑制性サイトカイン産生やArginase活性増強などを介した免疫抑制状態の誘導を減少させることと,がん関連線維芽細胞(CAF)における免疫抑制に関与する分子の発現が低下するとともに,CAFのin vitro T細胞活性化能が増強することが示唆された.ARBの単独投与では有意な腫瘍増殖抑制効果は認められなかったが,ARBの併用投与は,抗腫瘍CD8陽性T細胞依存的な抗PD-L1抗体投与の治療効果を増強した.ARBは,がん組織中で,TAMやMDSCに加えて,CAFにも作用し,これらの免疫抑制作用を改善することにより,抗腫瘍T細胞誘導を増強させて,抗腫瘍CD8陽性T細胞依存性抗PD-L1抗体投与の治療効果を増強させる作用があることが判明した.