日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
専門スタディーフォーラム
専門スタディーフォーラム3-4 MΦ,樹状細胞 肝病態における炎症性マクロファージの役割とケモカインシグナルの阻害を介した病態制御の可能性
中本 伸宏
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 38 巻 4 号 p. 273

詳細
抄録

  肝臓は門脈を介して常に食物関連抗原やPathogen-associated molecular patternsなど消化管由来の抗原提示を受ける.消化管には100兆個以上の腸内細菌が常在し,これらの外来抗原に対する免疫応答,あるいは過剰な免疫応答を抑制する免疫調整機構により生体の恒常性が保たれている.上記の過程において肝マクロファージが重要な役割を果たすことは広く知られているが,各病態におけるマクロファージの機能,由来(tissue resident or bone marrow-derived recruited macrophages),遊走機序,腸内細菌等の病原体や他の免疫細胞との相互作用等の詳細については不明な点が多い.我々はマウス急性肝障害モデルにおいて,炎症時に肝臓内に増加するCD11b+F4/80+マクロファージがケモカイン受容体の一つであるCCR9を高発現していることを見出した.欠損マウスを用いた検討により,急性肝障害時にCD11b+F4/80+マクロファージがCCR9依存的に肝臓内に集積し,TNF-aなどの炎症性サイトカイン産生によるTh1誘導を介して病態に寄与することを明らかにした.重要なことにCCR9陽性マクロファージは急性肝障害時のみならず,肝脂肪化や肝線維化においても脂肪細胞や肝星細胞との相互作用を介して病態に深く関与する.本フォーラムにおいてCCR9陽性マクロファージの由来やCCL25/CCR9阻害を介した肝疾患に対する治療応用の可能性について言及する.

著者関連情報
© 2015 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top