日本臨床免疫学会会誌
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一般演題(ポスター)
P8-019 多発性筋炎に対するタクロリムス(Tac)加療中に発症した血栓性微小血管障害症(TMA)の1例
田村 誠朗東 幸太壷井 和幸安部 武生荻田 千愛横山 雄一古川 哲也吉川 卓宏斎藤 篤史西岡 亜紀関口 昌弘東 直人北野 将康角田 慎一郎松井 聖佐野 統
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2015 年 38 巻 4 号 p. 378a

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抄録

  【症例】65歳女性.1998年多発性筋炎と診断されPSL加療開始.治療経過中の2007年に関節リウマチを発症.2013年,多発性筋炎治療のためTacを開始.2015年2月上旬特に誘因なく全身倦怠感,食思不振が出現,さらに高血圧,腎機能低下,血小板減少,溶血性貧血を認めたことから,TMAが疑われ入院となった.同薬中止,血漿交換療法により血小板減少,溶血性貧血は改善したが,高血圧,腎機能低下が遷延したため腎生検したところ病理組織からはTMA,強皮症腎,CNI腎症が疑われた.ただしCNI腎症としてはTacの血中濃度は既存の報告と比し著明に低く,また薬剤中止後も腎機能低下が遷延していた点が非典型的であった.Ca拮抗薬,ACE阻害薬,ARBによる降圧加療をおこなったが血圧コントロールは困難であり,そこで強皮症腎に対して近年臨床効果が報告されているエンドセリン受容体拮抗薬を開始したところ徐々に血圧は低下し,良好な血圧コントロールを得た.本症例は軽度強指症症状やレイノー症状があり,また後に抗PL-7抗体陽性であることが分かったが,同抗体陽性例では強皮症を合併した報告もある.皮膚筋炎,多発性筋炎の加療に使用されるTacの投与については,TMAを誘発するとの報告もあり,また強皮症患者での投与では強皮症腎を発症した報告もある.同抗体陽性の患者にTac投与する際は強皮症腎やTMAの発症に十分留意する必要がある.若干の考察を加え報告する.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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