抄録
症例は39歳,男性.血清陰性関節リウマチとしてメトトレキサートおよびプレドニゾロンで加療されるも治療抵抗性であった.経過中に心窩部痛,下痢,下血が出現し,当科入院.消化管内視鏡検査ではびまん性の粘膜障害が確認され,胃粘膜および結腸粘膜の病理組織学的検査によりAAタイプの消化管アミロイドーシスと診断した.一方,入院時の腹部CTで仙腸関節に関節裂隙の狭小化を認めた.腰椎可動域制限などの臨床像とMRIで仙腸関節炎が確認されたことにより,改訂ニューヨーク診断基準(1984年)に基づき強直性脊椎炎(AS)と診断した.絶食による腸管安静と抗生剤により消化器症状は改善したが,炎症反応は残存し,関節症状が悪化した.アダリムマブ(ADA:40mg/2週)を開始したところ,速やかに関節症状は改善し,炎症反応も陰性化した.6か月後に施行した下部消化管内視鏡検査では検索し得た範囲内では粘膜障害は改善し,病理組織学的検査でもアミロイド沈着は消失していた.ASに消化管アミロイドーシスが合併することは稀であり,確立した治療法はないが,ADAが有効である可能性があると考えた.