日本臨床免疫学会会誌
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特集:慢性炎症と自己免疫疾患
二次進行型多発性硬化症の病態形成メカニズムと新規動物モデル
大木 伸司
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2016 年 39 巻 2 号 p. 103-113

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抄録

  多発性硬化症(MS)の難治性病型である二次進行型MS(SPMS)の原因は不明であり,有効な治療法にも乏しいことから,早期の対策が望まれている.筆者等は,以前に再発寛解型MSに関わる病原性Th17細胞の制御分子であることを見出したNR4A2の遺伝子欠損マウスを作製し,同マウスを用いた実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を解析した.その結果,C57BL/6マウスにMOG35-55ペプチドを免疫して誘導するEAE病態の背後に,転写因子Eomesを発現するユニークなTh細胞が関与し,Th17細胞に依存しない後期病態が存在することを新たに見出した.興味深いことに,ヒト末梢血および髄液中のEomes陽性Th細胞の選択的な増加がSPMSのみで認められたことから,SPMSの病態形成過程にEomes陽性Th細胞が関与する可能性が示された.さらに病態形成機序の解析から,刺激を受けたEomes陽性Th細胞が産生するGranzyme Bが,(恐らく神経細胞が発現する)Par-1受容体に作用して後期病態を引き起こすことを明らかにした.神経変性をともなうSPMSの新規動物モデルを得て,同疾患の病態形成メカニズムの解明と治療法の開発が飛躍的に進むことが期待される.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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