2016 年 39 巻 2 号 p. 140-144
多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)の診断,臨床的特徴や内臓合併症を予測する筋炎特異的自己抗体が多く同定されている.5種類の抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体(抗Jo-1抗体,抗PL-7抗体,抗PL-12抗体,抗EJ抗体,抗KS抗体)を一度に検出できる新規ELISAキット「MESACUP anti ARSテスト」が保険収載された.このELISAキットの検査精度を検証するため当科通院中のPM/DM患者75例を対象としRNA免疫沈降法(RNA immunoprecipitation: RNA-IP)で同定した抗ARS抗体,既存の抗Jo-1抗体(ELISA法)と比較検討した.RNA-IP法と新規ELISAキットの判定一致率は95.1%,陽性一致率は90.9%,陰性一致率は96.0%,κ係数は0.841と優れていた.抗Jo-1抗体(ELISA法)と新規ELISAキットの判定一致率は97.3%,陽性一致率は100%,陰性一致率は96.8%,κ係数は0.911と優れていた.間質性肺炎合併例において抗ARS抗体と抗melanoma differentiation associated gene5(MDA5)抗体陽性が全体の70.5%を占めた.急速進行型のILDを伴うDMは,抗ARS抗体陰性であれば抗MDA5抗体陽性の間質性肺炎の可能性を早期に推測することにつながる.