日本臨床免疫学会会誌
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総説
HTLV-1関連脊髄症(HAM)の分子病態解明による治療薬開発の新展開
新谷 奈津美佐藤 知雄コラライリー アリエラ八木下 尚子山野 嘉久
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2016 年 39 巻 3 号 p. 207-212

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抄録

  ヒトTリンパ好性ウイルス1型(HTLV-1)の感染者の一部に発症するHTLV-1関連脊髄症(HAM)は,いまだ有効な治療法に乏しい極めて深刻な難治性疾患であり,病態の本質的な過程に作用し,疾患そのものの進行を抑制する真に有効な治療薬の開発が急務である.近年,著者らはHAMにおいてHTLV-1がケモカイン受容体CCR4陽性T細胞に主に感染しており,その細胞にTh1様の機能異常を起こすことが病態形成に重要であることを証明した.またHAMの脊髄病巣の形成・維持に,Th1様感染T細胞とアストロサイトとのクロストークによる炎症のポジティブフィードバックループの形成が重要であることを明らかにした.さらに,CCR4陽性T細胞を破壊する抗CCR4抗体が,HAM患者由来の細胞に対して,抗感染細胞活性,抗炎症活性を示すことを証明した.以上より抗CCR4抗体療法は,これまで実現しなかったHAMの感染細胞を標的とした根本的な治療になり得ると考えられ,現在,臨床試験が実施されるまで発展している.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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