日本臨床免疫学会会誌
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総説
B細胞を中心とした全身性強皮症における免疫学的異常と治療戦略
吉崎 歩
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2016 年 39 巻 3 号 p. 197-206

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抄録
  古くからB細胞は抗体産生に特化した機能を持ち,免疫系において他に重要な役割は果たさないと見なされてきた.ところが近年になり,B細胞には抗体産生能以外にも様々な機能が備わっていることが明らかとされている.例えばマクロファージや樹状細胞と同様に,抗原提示能を有し,さらには多種類のサイトカインを産生することでT細胞や他の免疫担当細胞へ直接働きかけ,それらの活性化や分化を誘導する.このように多彩な機能を持つB細胞は,免疫系において中心的な役割を果たしていると考えられるようになってきた.自己免疫反応においても,B細胞は中心的な役割を担っていることが明らかとなっており,自己免疫疾患である全身性強皮症(systemic sclerosis; SSc)に対しても病態形成に重要な役割を果たすことが強く示唆されている.このため,B細胞をターゲットとした治療はSScにおける新たな治療戦略になり得ると期待されている.特にB細胞表面に特異的に発現するCD20に対する抗体を用いた,B細胞除去療法は種々の自己免疫疾患において有効であることが示されており,B細胞の重要性をさらに強調している.本稿では最初にB細胞の多彩な役割について述べ,SScの病態におけるB細胞の役割と,B細胞を標的とした治療法について最新の知見を概説する.
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© 2016 日本臨床免疫学会
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