日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
シンポジウム
シンポジウム1-2 短鎖βグルカンによる腸管免疫恒常性の維持
岩倉 洋一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 39 巻 4 号 p. 288

詳細
抄録

  βグルカン(BG)は,真菌の細胞壁の構成成分であり,漢方薬や機能性食品として利用されているにも拘らず,これまで生体での働きはよくわかっていない.今回,我々はBGの受容体であるデクチン1の遺伝子欠損マウスを用いて,潰瘍性大腸炎のモデルであるデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導大腸炎を誘導したところ,大腸炎に耐性である事を見出した.この時,デクチン1シグナルは大腸で抗菌蛋白質(S100A8)の分泌を促し,腸管内のLactobacillus murinusの増殖を抑制するのに対し,デクチン1シグナルが入らなくなると,増殖抑制が解除され菌の増殖が促進されると同時に,Tregの分化が誘導されることを見出した.この乳酸桿菌だけを無菌マウスに移入すると,このマウスでもTreg細胞が増加しDSS誘導大腸炎に耐性となる事から,L. murinusがTreg増加に重要な役割を果たしていることがわかった.ところで,海藻に含まれるラミナリン等の低分子βグルカンは大きな分子量を持つβグルカンの作用を拮抗的に阻害することが知られているが,マウスに低分子グルカンを食べさせると,L. murinusが増殖し,Treg細胞が増える事によって,腸管炎症が抑制されることがわかった.これらの結果から,BGが腸内の細菌叢を変える事によって,腸管の免疫応答性を調節するのに重要な役割を果たしている事が明らかになった.

著者関連情報
© 2016 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top