日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム1-4 乳酸菌由来ポリリン酸を用いた新規炎症性腸疾患治療薬の開発
藤谷 幹浩
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2016 年 39 巻 4 号 p. 290

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抄録

  【目的】炎症性腸疾患(IBD)は原因不明の慢性炎症性疾患であり宿主免疫や腸内細菌叢の異常が関与するとされる.本研究は,プロバイオティクス由来の活性物質を用いた新規IBD治療薬の開発を目的とする.【方法】1.乳酸菌SBL88の培養上清を各種カラムで分離しヒト腸上皮由来Caco2/bbe細胞に投与して,heat shock protein(Hsp)27の誘導能を持つ分画を選別した(western blotting).この分画の成分分析を行い菌由来活性物質を同定した.2.薬剤誘発腸炎モデル(DSS,TNBS),IL-10欠損マウス由来T細胞移入モデルに菌由来活性物質を注腸投与して組織所見,炎症・線維化関連分子の発現を検討した.3.32P標識菌由来活性物質を作製し腸上皮による認識機構とその後の細胞内動態を検討した.【成績】1.乳酸菌SBL88の培養上清からHsp27誘導能をもつ物質である長鎖ポリリン酸を同定した.2.長鎖ポリリン酸投与によりDSS慢性腸炎,TNBS腸炎による腸管短縮,組織学的な炎症および線維化が改善した.また,腸管粘膜における炎症性サイトカインIL-1β,TNFα,IFNγおよび線維化促進分子TGFβ1,SMAD4,CTGFの過剰発現が抑制された.3.長鎖ポリリン酸は腸上皮のintegrinβ1と結合し,エンドサイトーシスにより短時間で腸上皮内に取り込まれ腸管保護作用を発揮した.【結論】乳酸菌由来長鎖ポリリン酸は腸炎モデルの腸管障害や線維化を改善することから,IBDの新規治療薬として臨床応用が期待される.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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