日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム3-1 医師主導治験による治療薬開発中の研究者の言い分
山村 隆
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2016 年 39 巻 4 号 p. 297

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抄録

  医師主導治験は,企業が開発に手を出さないような薬剤の開発を,医師自らの手で行うものであり,これは「道なき道を歩む」に似た作業である.我々は現在,多発性硬化症の動物モデルEAEに薬効を示す糖脂質医薬OCH(Miyamoto, Miyake, Yamamura. Nature 2001)の実用化を目指し,開発研究を医師主導で進めている.企業と共同開発をした時期もあったが,企業は臨床治験へ進める決断が下せなかった.幸運なことに,2012年からNCNP病院内で医師主導のFirst in human試験を進めることが許され,現在に至っている.プロジェクト関係者のほとんどにとって未経験の作業の連続であり,開発責任者,治験責任医師,バイオマーカー研究者,CRC,企業出身アドバイザーの間で,意見が異なることはしばしばある.また安全性検討委員会,規制当局,ファンディング・エージェンシーにも,それぞれの立場がある.異なる背景を持つ関係者から,プロジェクトの崩壊に繋がりかねない的外れの意見が届くこともあれば,行き違いによってプロジェクトの遅れを生じることもある.本シンポジウムでは,後に続く研究者のために,自らの経験を可能な限り紹介したい.現在の医薬品開発が,経済原則に完全に支配され,それが新薬の陳腐化や薬剤費高騰を招いているなかで,医師主導治験の意義についても議論したい.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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