日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
6学会合同シンポジウム
6学会合同シンポジウム6 抑制性免疫の解析によるその制御法や有効例選択バイオマーカーの探索と変異遺伝子を標的とする複合がん免疫療法の開発
硲 彰一玉田 耕治奥野 清隆間野 博行宇高 恵子河上 裕永野 浩昭
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 39 巻 4 号 p. 308

詳細
抄録

  近年,がん免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤の開発で注目を集めているが効果は未だ十分とは言えず,治療効果向上のためには,有効症例を選択する指標を確立すること,免疫チェックポイントに代表される抑制性免疫病態を同定して制御する薬剤を同定・開発すること,並びに腫瘍抗原由来ペプチドの同定と投与により腫瘍抗原認識を高めることが重要である.我々は約500例のペプチド療法や樹状細胞療法施行症例の臨床成績と検体(腫瘍組織・PBMC・血清)を用い,一般臨床検査結果,サイトカイン,microRNAや蛋白の解析から,治療前に有効症例を選択できる血液・腫瘍組織のバイオマーカーを探索・同定してきた.同時に,制御すべき抑制性免疫について解析を行い,制御すべき負の免疫病態とそれに対応する薬剤を選択し,すでに2つの新規複合がん免疫療法の臨床試験を平成28年に開始した.一方,大腸がん原発巣と転移巣の全エクソン解析とRNAシークエンスにより遺伝子変異を検索したが,各患者に共通した変異は少なく,ネオアンチゲンによる治療は個別化治療となる可能性が高い.従ってHLA高親和性ペプチドを効率よく同定する技術が必須でありネオアンチゲン由来新規ペプチドの同定と投与により特異的免疫誘導を効率よく行うための共同研究を開始した.以上,有効症例の選択,抑制性免疫制御,並びに個別化ネオアンチゲン由来ペプチドを用いた極めて効果の高い複合免疫療法の開発を進める.

著者関連情報
© 2016 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top