日本臨床免疫学会会誌
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6学会合同シンポジウム
6学会合同シンポジウム5 リウマチ膠原病疾患で個別化医療は可能か?
田中 良哉
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2016 年 39 巻 4 号 p. 307

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抄録

  関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)は,代表的な全身性自己免疫疾患(膠原病)である.治療には免疫異常を是正して疾患活動性を制御することを目的として免疫抑制薬や生物学的製剤が使用される.これらの薬剤を用いた的確な治療により,RAでは臨床的寛解達成が治療目標となり,関節破壊抑止や身体機能保持が可能となった.また,生物学的製剤の適応は多彩なリウマチ膠原病疾患に拡大している.しかし,SLE等のように疾患や症例間のheterogeneityにより治験が失敗したり,治療に難渋したりしてきた.それを克服するために,遺伝子情報を元に治療法を選択する試みがなされる.一方我々は,治療導入前に8カラーフローサイトメトリーにて解析した末梢血リンパ球のフェノタイプの相違による個別化治療を試みてきた.例えば,SLEや血管炎症候群ではTh活性型と形質細胞分化誘導型に分類されること,乾癬性関節炎のCD4細胞はケモカイン受容体発現により4群に分類されることなどを見いだし,それらを元に治療選択を行ない,個別化治療を目指す研究を行ってきた.リウマチ膠原病疾患において異なる分子標的薬による個別化医療(precision medicine)が可能となれば,RAと同様にステロイドを使用せずとも疾患制御できるような新しい治療体系,戦略の構築に資するものと期待される.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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