日本臨床免疫学会会誌
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専門スタディー1-5 B細胞 自己免疫疾患におけるB細胞代謝リプログラミングと病態への関与
岩田 慈鳥越 雅隆阪田 圭元 舞子中山田 真吾田中 良哉
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2016 年 39 巻 4 号 p. 318

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抄録

  近年,様々な免疫担当細胞の活性化,分化における細胞内代謝変容が注目されているが,ヒトB細胞における関与は不詳である.我々は,健常人末梢血よりB細胞サブセット(IgD+CD27−, IgD+CD27+, IgD−CD27+)を分離し,TLR9およびIFN-αシグナルによる分化や機能への影響,さらに細胞内代謝変容との関連を検討した.IgD+CD27+ B細胞において,TLR9シグナルにより大量のサイトカインや抗体の産生,plasmablast分化が誘導された.これらの免疫応答の際,mTORC1リン酸化(p-mTORC1)や乳酸産生の増加,つまり解糖系亢進が確認され,IFN-αは同細胞内機構および分化や機能を増幅した.またAMPKシグナル増強は,TLR9シグナルにより誘導されたp-mTORC1や乳酸産生,plasmablast分化を抑制し,一方でIgD−CD27− B細胞への分化に寄与した.次に,SLE患者B細胞におけるp-mTORC1を測定したところ,健常人に比し有意に亢進しており,plasmablastの割合や疾患活動性と有意に相関していた.以上より,IgD+CD27+ B細胞における細胞内代謝変容は,迅速かつ強力な機能を発揮するエフェクター細胞,或いはmemoryへの分化偏向決定に重要であり,SLEなどの自己免疫疾患の病態形成において重要である可能性が示唆された.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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