日本臨床免疫学会会誌
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専門スタディー
専門スタディー2-1 マクロファージ・樹状細胞 関節炎疾患における単球系細胞の役割
宮本 健史
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2016 年 39 巻 4 号 p. 319

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抄録

  関節リウマチ(RA)に代表される関節炎疾患は,関節炎とともに関節変形や破壊が同時に進行することが知られている.RAは遺伝的要素のほか,喫煙などの生活背景や感染等を背景に発症する多因子疾患であるが,その発症機構の詳細については明らかにされていない.関節炎はTNFαに代表される炎症性サイトカインにより誘導されることが知られている.一方,関節変形や破壊は単球・マクロファージ系細胞由来の骨吸収細胞である破骨細胞により引き起こされることが知られており,関節炎の動物モデルでは,破骨細胞分化が完全に抑制されるマウスや破骨細胞分化を強力に抑制する薬剤の投与条件下では関節破壊が抑制されることが報告されている.一方,関節炎は破骨細胞を抑制しても残存することから,関節炎と関節破壊の発症機構は分けて考えることができる.しかし,関節炎と関節破壊という異なる病態が,一人の患者の中で同時に発症することも考えにくく,両者が関連して発症することが考えられる.我々はシグナル分子で転写因子でもあるStat3を介した炎症性サイトカインによる炎症性サイトカインのポジティブフィードバックが,炎症性サイトカインと破骨細胞分化誘導因子であるRANKLの発現誘導に関与し,このことにより関節炎と関節破壊が同時に起こること,またそれが慢性化することを見出している.本セッションではこれらの知見について考察したい.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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