日本臨床免疫学会会誌
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専門スタディー3-4 T細胞 制御性T細胞におけるIkarosファミリー分子Heliosの発現機構とその役割
高取 宏昌川島 広捻中島 裕史
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2016 年 39 巻 4 号 p. 326

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抄録

  【目的】近年,制御性T細胞(Tregs)におけるHeliosの発現亢進や減弱がSLEや重症筋無力症などの自己免疫疾患の発症に関与している可能性が示唆されている.しかしながらHelios+ Tregsの分化調節機構は未だ不明である.そこで本研究では,ヒト及びマウスのCD4+ T細胞におけるHeliosの発現機構やその役割を明らかにすることを目的とした.【方法】1.関節リウマチ(RA)患者の末梢血CD4+ T細胞におけるHelios遺伝子の発現をTocilizumab(TCZ)等の生物製剤投与前後で比較した.2.ヒト及びマウスのCD4+ T細胞のHelios発現に対するIL-6とTGF-βの作用を解析した.3.マウスのiTregsにHeliosを発現させた際の抑制能への影響を検討した.4.Foxp3欠損マウス由来のCD4+ T細胞を用い,Heliosの発現誘導におけるFoxp3の役割を解析した.【成績】1.TCZ治療が有効であったRA患者では,CD4+ T細胞におけるHeliosの発現が投与後に有意に増加した.2.ヒト及びマウスのCD4+ T細胞において,IL-6はTGF-βにより誘導されたHeliosの発現を抑制した.3.マウスiTregsにおけるHeliosの発現誘導にはFoxp3の発現とTGF-βシグナルの両者が必須であった.4.マウスiTregsにHeliosを発現させるとiTregsの抑制能が増強された.5.HeliosによるiTregsの抑制能の増強は,Foxp3欠損CD4+ T細胞では認められなかった.【結論】HeliosはFoxp3と協調して制御性T細胞の機能を増強する.

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