日本臨床免疫学会会誌
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学会特別企画 分子標的薬のアニュアルレビュー
学会特別企画 分子標的薬のアニュアルレビュー1 がん治療における免疫チェックポイント阻害剤とキナーゼ阻害薬~免疫系へ及ぼす作用の観点から~
北野 滋久
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2016 年 39 巻 4 号 p. 328

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抄録

  がん免疫療法のなかで,もっとも成功し世界的な注目を集めているのが免疫チェックポイント阻害剤であり,悪性黒色腫,非小細胞肺がんでの成功を始めとして,各種がんにおい臨床第III相試験がすすめられており,さらには同薬剤同士の併用療法についての開発も積極的に行われている.

  一方,キナーゼ阻害剤についても積極的に開発が進められている.作用機序のひとつとして,とくに抗VEGF効果を含むmulti kinase阻害剤には,制御性T細胞,骨髄由来抑制細胞,腫瘍関連マクロファージなどの免疫抑制細胞の働きを抑制し,腫瘍微小環境においてエフェクター細胞の浸潤を増加させ,抗腫瘍免疫応答を活性化させる効果が非臨床試験のデータから示唆されている.

  今後,各種複合的がん免疫療法がすすめられていくなかで,治療戦略の一つとして,免疫抑制細胞群やそれらの制御に関与する因子の働きを抑えることが,抗腫瘍効果を高める可能性があり,免疫チェックポイント阻害剤とkinase阻害剤の併用療法にも開発の期待が高まっている.しかしながら,併用療法による効果の上乗せが期待される一方で,有害事象についても十分な注意がはらわなければならないと考えられる.

  本レビューではがん治療における免疫チェックポイント阻害剤とキナーゼ阻害薬について総括したい.

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