日本臨床免疫学会会誌
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ビギナーズセミナー
ビギナーズセミナー3 原発性免疫不全症
森尾 友宏
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2016 年 39 巻 4 号 p. 334

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抄録

  原発性免疫不全症は,先天的に免疫系のいずれかの部分に欠陥がある疾患の総称であり,基本的には単一遺伝子異常による単一分子の異常から生じる疾患である.障害される免疫担当細胞(例えば,好中球,T細胞,B細胞)などの種類や病因・病像により,9つのカテゴリー,300近くの疾患に分類されている.当初は原発性免疫不全症の特質として「易感染性」があげられていた.しかし近年は,免疫調節の異常,自己炎症,DNA損傷修復異常などにより,自己免疫疾患,膠原病リウマチ疾患,腫瘍性疾患が前面に出る症候群が数多く知られるようになり,単一遺伝子異常による免疫疾患の総称となっている感がある.多臓器にわたる異常を示す疾患も数多い.臨床的には多くは病歴,身体所見,基本的免疫検査により診断を類推することができる.一方,様々な分子の異常により現れる病像は,疾患の成り立ちを考える上で多くの示唆を与えてくれる.1つの分子を阻害した際の症状・所見のモデルともなる疾患である.このセミナーでは,原発性免疫不全症の概要をつかみ,基本を理解するのための概説を中心とし,トピックスとして診断法や治療法の進歩についても簡単に触れることとしたい.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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