2016 年 39 巻 4 号 p. 353a
ヒトの固形癌の進展において,多くの局面でマクロファージが関与すると考えられている.腫瘍内に浸潤したマクロファージは,TAM(tumor-associated macrophage)と呼ばれ,腫瘍の増殖や転移,浸潤,血管新生,免疫抑制に関与している.TAMの多くは血液単球に由来し,腫瘍細胞由来のCCL2(MCP1)やGM-CSF, M-CSFにより腫瘍局所へ遊走してくる.腫瘍局所では腫瘍由来因子や低酸素状態などによりマクロファージはM2寄りの活性化状態に誘導され,腫瘍の進展に寄与しているようである.そのためマクロファージを標的にした治療法の開発も試みられている.また,リンパ節は免疫反応に重要な役割を果たす臓器であり,多数の在住マクロファージが認められる.所属リンパ節におけるマクロファージは,癌病変部から流入する腫瘍抗原を取り込み,リンパ球に抗原提示することで抗腫瘍免疫の一翼を担っているようである.TAMやリンパ節マクロファージなどの役割や治療標的としての可能性について考察を加えたい.