組織マクロファージは免疫細胞の一つとして広く知られているが,血流が開始していない胎生初期から全身に存在する.また高度な免疫機能を持たないミジンコやホヤなどの下等生物にも存在し,免疫機能以外の生理的な役割,特に器官形成における役割ついて,近年精力的に解析が進められている.その中でわたしたちは,中枢神経系(脳,網膜など)における組織マクロファージに相当するミクログリアに焦点を当て,その血管発生における役割について取り組んできた.マウス網膜血管網は新生仔期に視神経乳頭から網膜辺縁部に向けて同心円状に発育し,その最先端の血管内皮細胞(Tip細胞)が糸状仮足を伸ばしつつ無血管野へと遊走し,後続の血管網をリードする.ミクログリアの網膜血管形成における役割として,Tip細胞とTip細胞が糸状仮足の連結により新たな分枝を作り出す際に,橋渡し(Bridging)の役割を果たすことで,血管の密度を調節することを見出した.さらには,血管が逆にミクログリアの活性を調節し,中枢神経系の恒常性維持に寄与することも見出した.本講演では,この血管とミクログリアとの両方向性の相互作用につき最新の知見を踏まえて議論したい.