2016 年 39 巻 4 号 p. 392a
近年,がん免疫療法の治療効果が臨床試験で確認されたが,さらなる抗腫瘍効果の改善,特にPD-1/PD-L1阻害による免疫チェックポイント阻害療法の効果を増強できる免疫調節剤の開発が期待されている.我々は,天然化合物・既存薬など各種低分子化合物ライブラリーのスクリーニングにより,複数のがん免疫調節性低分子化合物の同定に成功している.そのうちの一つ,ベルベリンは,抗菌・抗炎症などの作用をもつ既存薬であるが,最近,MAPKシグナル阻害やAMPK活性化などを介した抗がん作用も報告されている.ベルベリンが直接的な抗腫瘍作用を示さないマウス腫瘍モデルにおいて,その腹腔内投与は,センチネルリンパ節でのメモリーT細胞の増加,および腫瘍組織内での,抗アポトーシスタンパク質Bcl2やBat3の発現上昇を伴う腫瘍抗原特異的CD8+T細胞の生存促進作用により,CD8+T細胞依存性の抗腫瘍効果を示すことを見いだした.ベルベリン投与は,樹状細胞,骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC),制御性T細胞に対する作用を示さず,直接,T細胞に作用している可能性が示唆された.さらに,ベルベリンと抗PD-L1阻害抗体との併用により抗腫瘍効果が増強された.以上の結果から,ベルベリンは既存薬であることからも,今後,PD-1/PD-L1阻害薬との併用による複合がん免疫療法の開発が期待される.