2016 年 39 巻 4 号 p. 405b
【背景・目的】T細胞に発現するCEACAM1は腸管の免疫応答を調節し得ることが最近明らかになった.T細胞に加えてB細胞もまた腸管関連リンパ組織において主要な構成要素の一つである.そこで我々はB細胞におけるCEACAM1の発現を解析した.【方法・結果】C57BL6マウス(B6)の脾細胞を単離し,各リンパ球分画をFACS解析した結果,T細胞分画よりB細胞分画の細胞表面でCEACAM1は多く発現していた.骨髄細胞を解析した結果,B細胞の分化段階が進むにつれてCEACAM1の発現レベルが上昇していた.B細胞におけるCEACAM1の機能を解析するため脾臓B細胞のTLR4,CD40,あるいはB細胞受容体(BCR)を刺激しサイトカイン産生を測定した結果,CEACAM1はBCRシグナル特異的なB細胞の活性化を抑制した.【考察】BCRシグナルはB細胞の増殖,分化やIgクラススイッチ,サイトカイン産生を促進するが,CEACAM1 はこうした機能を抑制することで腸管粘膜における免疫調節に関与していると考えられる.炎症性腸疾患(IBD)は病的に活性化したB細胞やT細胞が腸管粘膜に浸潤する難治性の病態である.B細胞におけるCEACAM1の機能を明らかにすることでIBDに対する新規治療法の開発に応用できると期待する.