2016 年 39 巻 4 号 p. 420b
【背景】家族性血球貪食症候群(FHL)は,NK細胞やCTLの細胞傷害活性の異常を本態とする致死性疾患であり,迅速かつ正確な診断が必須である.FHL3型はMunc13-4蛋白の異常を原因とし,本邦では2番目に頻度が多いが,迅速診断法や変異の機能評価系は未だ確立されていない.【目的】FHL3の迅速診断法として1.CD57陽性CTLにおける脱顆粒能評価と2.蛋白発現解析の信頼性の評価,ならびに3.特定変異の機能解析系の構築【方法】1.血球貪食症候群(HLH)を発症した患者42名のNK,CD57陽性CTLの脱顆粒機能評価の結果を集積し評価した.2.既報ミスセンス変異,当科で診断したlate-onset症例のミスセンス変異のcDNA発現コンストラクトを作成し,Munc13-4蛋白の発現量を評価した.3.FHL3モデル細胞株を作成し,上記cDNAの強制発現による脱顆粒能・細胞障害活性への影響を評価した.【結果】1.無刺激NK脱顆粒能は二次性HLH患者の一部でも低下していた.IL-2刺激NK細胞ではFHL3患者の一部に脱顆粒が認められた.CD57陽性CTLの脱顆粒能の低下はFHL3患者に特異的であった.2.疾患原性ミスセンス変異ではMunc13-4蛋白発現の低下が認められた.3.ミスセンス変異における脱顆粒能は蛋白発現量に依存すると考えられた.【結論】CD57陽性CTLの脱顆粒能評価とMunc13-4蛋白発現評価はFHL3の迅速診断として信頼性が高く,FHL3モデル細胞株は特定の変異の脱顆粒・細胞障害活性への影響を評価する一助となる.