日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
抗ARS抗体症候群に血球貪食症候群(HPS)が合併した1例
東 幸太田村 誠朗蔵城 雅文細野 祐司中嶋 蘭壷井 和幸安部 武生荻田 千愛横山 雄一古川 哲也吉川 卓宏斎藤 篤史西岡 亜紀関口 昌弘東 直人北野 将康角田 慎一郎大村 浩一郎小山 英則松井 聖三森 経世佐野 統
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2016 年 39 巻 6 号 p. 538-544

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抄録

  48歳,女性,主訴は発熱,全身倦怠感.2013年12月から38℃の発熱が出現し近医受診.間質性肺炎を指摘されるも経過観察となっていた.2014年1月に手指の皮疹,末梢血流障害が出現.成人Still病疑いと診断され,ベタメタゾン(0.5mg/day)とシクロスポリン(75mg/day)でコントロールされていた.2014年11月に全身倦怠感,発熱,頭痛などの症状出現.頭部MRIで下垂体腫大認め,採血でも抗下垂体抗体陽性のため自己免疫性下垂体炎と診断.当院での治療を希望されたため2015年5月当院内分泌科入院となったが,活動性は乏しく,無治療経過観察となった.発熱・間質性肺炎・レイノー症状・両側大腿内側部の筋痛などの症状あることから膠原病が疑われ,精査加療目的に当科転科となった.成人Still病は診断基準を満たすものではなく,現在の病態を正確に把握するため,ベタメタゾンとシクロスポリンは中止とした.入院時血液検査は抗ARS抗体陽性,筋原性酵素上昇を認めた.間質性肺炎を伴う抗ARS症候群と診断し,mPSL 500mg×3日間投与し,後療法はプレドニゾロン(PSL)35mg/dayで開始とした.その後症状は治まっていたが,3日後に再度発熱・筋痛が出現し汎血球減少も伴った.骨髄穿刺で貪食像を認めたため,血球貪食症候群(HPS)と考え,増悪に起因すると考え125mg/dayで再開.その後は発熱・筋痛は消失し再燃を認めていない.また汎血球減少に関しても治療後は3系統とも血球の改善を認めた.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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