日本臨床免疫学会会誌
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39 巻, 6 号
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総説
  • 山本 元久
    2016 年 39 巻 6 号 p. 485-490
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

      IgG4関連疾患は,高IgG4血症と腫大した罹患臓器への著明なIgG4陽性形質細胞浸潤と線維化を呈する慢性炎症性疾患である.涙腺,唾液腺,膵,腎,肺,後腹膜腔など,多彩な臓器病変を呈し得る全身疾患である.現在,本疾患に対する寛解導入には,ステロイド薬が第一選択であるが,多くの症例ではステロイド維持療法が必要であり,経過中の再燃率も非常に高いことが判明している.近年,本疾患の再燃例に対して,リツキシマブやアバタセプトなどの生物学的製剤の有効性が報告されている.従来の経口免疫抑制薬に比較し,ステロイド減量効果も優れ,適応を選べば安全に使用できることも明らかになってきている.今後,わが国においても,IgG4関連疾患の再燃例に対するリツキシマブの有効性を評価するための医師主導自主臨床研究が予定されている.本稿では,当学が中心となり構築しているIgG4関連疾患症例登録システム(SMARTレジストリー)のデータ及び生物学的製剤を使用した自験例を紹介し,IgG4関連疾患に対する生物学的製剤の可能性と問題点について論じてみたいと思う.

  • 石津 明洋
    2016 年 39 巻 6 号 p. 491-496
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

      血清中の抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody: ANCA)陽性を特徴とする血管炎をANCA関連血管炎という.ANCAには疾患マーカーとしての意義があるのみならず,病原性がある.これまでANCAが血管炎を引き起こす機序として,ANCA-サイトカインシークエンス説が提唱されてきたが,近年の研究により,ANCAによる好中球の過剰な活性化には,サイトカインの異常産生に加え,好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps: NETs)の形成誘導も含まれることが明らかとなってきた.本総説では,ANCA関連血管炎の病態形成における好中球,好酸球,マクロファージ/樹状細胞,補体,B細胞/形質細胞,T細胞,サイトカイン/ケモカイン/細胞増殖因子の役割について概説する.

  • 竹田 剛
    2016 年 39 巻 6 号 p. 497-504
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

      近年の高齢化社会を反映して関節リウマチ(RA)患者も高齢化が進み,高齢で発症するRAも増加している.高齢者RAは若年発症し高齢化したRAと,60歳以上で発症したElderly onset rheumatoid arthritis(EORA)に分類される.高齢化RAでは骨破壊やADLに応じて,抗リウマチ薬に加え,鎮痛剤の使用,手術やリハビリテーションなど多面的治療が必要となる.一方発症初期のEORAではT2Tに準じて治療するが,低疾患活動性を目標にコントロールするのが現実的である.高齢者は多彩な合併症を有し多剤内服例も多いため,治療に当たり合併症や併用薬の把握と定期的なモニタリングを行うことが重要である.高齢者においてもメトトレキサート(MTX)が使用可能な場合は第一選択となり,2-4 mg/週の少量から開始し慎重に漸増する.腎障害や認知機能の低下により,MTXを使用出来ない症例では生物製剤も選択肢となる.MTX非併用で生物製剤を使用する際は,単剤で有効性の高い製剤を選択し,ステロイド剤は感染症のリスクを軽減するため極力減量する.増加しつつある超高齢RAの治療は今後の課題となる.

  • 渡辺 玲
    2016 年 39 巻 6 号 p. 505-512
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

      生体内のmemory T細胞分画に関して,近年一旦組織に移行した後循環に戻らずその組織に留まり続けるresident memory T細胞(TRM)の存在が明らかになり,研究が活発に進められている.TRMは細胞表面にCD69,CD103を発現し強いエフェクター機能を有する分画としての報告が多く,消化管,皮膚,呼吸器,生殖器上皮などバリア組織における異物侵入防御に働く他,脳神経系,腺組織,リンパ組織,肝臓,腎臓,膵臓,関節といった非バリア組織においても主にマウスモデルでその存在が報告され,慢性炎症性疾患,自己免疫疾患などにおける病態発現との関与も強く考えられるようになった.腫瘍免疫における役割も報告されつつある.本稿ではresident memory T細胞に関する現在までの知見をマウスとヒトの報告に分け,その構築,分布,疾患との関わりについて整理した.このT細胞分画の機能に関する理解を深める足がかりとしたい.

  • 秋岡 親司
    2016 年 39 巻 6 号 p. 513-521
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

      若年性特発性関節炎は,1990年代に提唱された新しい小児リウマチ性疾患である.分類基準により「小児期の原因不明の慢性関節炎」として定義され,発症時の臨床的特徴から,全身型,少関節型(持続型と進展型),多関節型リウマチ因子陰性,多関節型リウマチ因子陽性,乾癬性関節炎型,付着部炎関連関節炎型および分類不能型(いずれの病型にも分類できないか,複数の病型に該当するもの)の7病型に細分類される.各々の病型はカウンターパートとなる成人疾患の特徴をある程度反映するため,異なる病態,予後を示し,治療法も異なる.そのため,診療においては病型診断が必須となる.また民族差,地域差が有病率ならびに病型頻度にも認められるため,臨床研究に際しても各病型の特性を理解しておく必要がある.特に付着部炎関連関節炎型においてはHLA-B27陰性の付着部炎疾患polyenthesitisが本邦には存在し,欧米とは異なった若年性特発性関節炎の体系を形作っている可能性がある.病型別の理解の上にさらなる病態の解明が望まれる.

  • 岡本 隆一, 渡辺 守
    2016 年 39 巻 6 号 p. 522-527
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

      腸上皮は個体の内外を分け隔てる物理的な境界として存在するだけでなく,腸内細菌等が存在する体外の環境と免疫担当細胞等が存在する体内の環境を仲立ちし,機能的に調和を保つ重要な役割を担っている.このような腸上皮が炎症性疾患の発症・病態の形成に果たす役割の重要性が臨床・病態研究の両面において注目されている.例えば粘液を産生する機能を有する腸上皮細胞である杯細胞は潰瘍性大腸炎において「消失」することが知られているが,同細胞が粘液産生機能だけでなく多彩な免疫調節機能を有し,疾患の発症・進展を規定する重要な機能を内在していることが明らかとなっている.更に小腸に局在する腸上皮細胞であるパネート細胞は抗菌活性を有するペプチドを産生する機能が知られているが,複数のクローン病疾患感受性遺伝子により同細胞の機能・細胞死が制御されている可能性が示されている.従ってクローン病における「パネート細胞機能異常」は特定の病型において疾患発症・再燃の要因の一つとなっているものと考えられている.本稿では腸上皮の機能と炎症性腸疾患の病態に関する近年の知見について,概説したい.

原著
  • Akira AWAYA
    2016 年 39 巻 6 号 p. 528-537
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

      Kawasaki disease (KD) is an acute systemic vasculitis presenting as an infantile febrile disease. In Japan, the widespread cedar plantation commenced in 1945 has been correlated with the increased incidences of both KD and allergic rhinitis (pollinosis) since the early 1960s. We previously showed that KD was a pollen-induced, delayed-type hypersensitivity that displays biphasic peaks in both summer and winter. KD incidences decrease suddenly around February, particularly after influenza epidemics. Here we investigated the reason for a drastic decrease in KD onsets directly before spring pollen release following rapid increase after autumn pollen release leading to the biphasic pattern. We separately analyzed weekly incidences of KD and influenza in Tokyo (1987-2010) and Kanagawa (1991-2002). Repeated measures for the analysis of variance followed by Bonferroni's multiple comparison tests were performed to compare KD incidence over 3 consecutive weeks, including the weeks when the mean KD prevalence showed the steepest decrease. Next, the week with peak influenza incidence was reset for each year. KD incidence over 3 consecutive weeks, including the new origin week (adjusted week 0), was similarly analyzed. In Tokyo and Kanagawa, KD incidence significantly decreased only after resetting the influenza peak time. These findings suggested that influenza epidemics suppressed KD onset.

症例報告
  • 東 幸太, 田村 誠朗, 蔵城 雅文, 細野 祐司, 中嶋 蘭, 壷井 和幸, 安部 武生, 荻田 千愛, 横山 雄一, 古川 哲也, 吉川 ...
    2016 年 39 巻 6 号 p. 538-544
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル フリー

      48歳,女性,主訴は発熱,全身倦怠感.2013年12月から38℃の発熱が出現し近医受診.間質性肺炎を指摘されるも経過観察となっていた.2014年1月に手指の皮疹,末梢血流障害が出現.成人Still病疑いと診断され,ベタメタゾン(0.5mg/day)とシクロスポリン(75mg/day)でコントロールされていた.2014年11月に全身倦怠感,発熱,頭痛などの症状出現.頭部MRIで下垂体腫大認め,採血でも抗下垂体抗体陽性のため自己免疫性下垂体炎と診断.当院での治療を希望されたため2015年5月当院内分泌科入院となったが,活動性は乏しく,無治療経過観察となった.発熱・間質性肺炎・レイノー症状・両側大腿内側部の筋痛などの症状あることから膠原病が疑われ,精査加療目的に当科転科となった.成人Still病は診断基準を満たすものではなく,現在の病態を正確に把握するため,ベタメタゾンとシクロスポリンは中止とした.入院時血液検査は抗ARS抗体陽性,筋原性酵素上昇を認めた.間質性肺炎を伴う抗ARS症候群と診断し,mPSL 500mg×3日間投与し,後療法はプレドニゾロン(PSL)35mg/dayで開始とした.その後症状は治まっていたが,3日後に再度発熱・筋痛が出現し汎血球減少も伴った.骨髄穿刺で貪食像を認めたため,血球貪食症候群(HPS)と考え,増悪に起因すると考え125mg/dayで再開.その後は発熱・筋痛は消失し再燃を認めていない.また汎血球減少に関しても治療後は3系統とも血球の改善を認めた.

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