2017 年 40 巻 1 号 p. 28-34
目的:Glucose-6-Phosphate-Isomerase(GPI)のAltered Peptide Ligand(APL)を米穀に発現させ,GPI誘導関節炎(GIA)に対する経口予防投与の有効性および抑制機序を検討することを目的とした.方法:GPIペプチドのT細胞エピトープのアミノ酸配列の一部を置換したAPLコンストラクトを遺伝子導入してAPL12発現米(APL12-TG)を作成した.GIAを誘導前にAPL12-TGを経口予防投与し,GIAマウスにおける関節炎の重症度・発症率および足関節の組織所見,血清抗GPI抗体産生および鼡径リンパ節のmRNA発現,脾臓・鼡径リンパ節・腸間膜リンパ節のIL-17産生および脾臓CD4+T細胞のmRNA発現,脾臓CD4+CD25+T細胞のFoxp3発現およびGITR発現を評価し,非遺伝子導入米(Non-TG)と比較した.結果:GPIペプチドのAPLコンストラクトを遺伝子導入したキヌアカ米でAPLペプチドの発現が確認された.Non-TGと比較して,APL12-TG群では関節炎の重症度,足関節の炎症細胞浸潤,血清抗GPI抗体産生,鼡径リンパ節のBAFF mRNA発現,脾臓・鼡径リンパ節のIL-17産生が有意に抑制された.さらに,脾臓CD4+T細胞のGITR mRNA発現,脾臓CD4+CD25+T細胞のFoxp3発現・GITR発現が有意に上昇した.結論:APL12-TGの経口予防投与により,脾臓の制御性T細胞におけるFoxp3発現・GITR発現が上昇し,IL-17産生および抗GPI抗体産生の抑制を介してGIAが抑制された.