日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
インフリキシマブが著効した可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症を合併した川崎病の幼児例
黒川 愛恵益田 博司小林 徹小野 博賀藤 均今留 謙一阿部 淳阿部 裕一伊藤 秀一石黒 精
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2017 年 40 巻 3 号 p. 190-195

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抄録

  川崎病は乳幼児に好発する全身性の血管炎である.川崎病における脳症の合併例は0.1%と少ないが,近年,学童期以降の患者におけるclinically mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion(MERS)の報告が散見される.著者らはMERSを合併した川崎病の2歳女児を経験した.患児は発熱2日目に全身性間代性痙攣を生じ,その後も意識障害が遷延した.第3病日の頭部MRIで脳梁膨大部に拡散強調像で高信号,apparent diffusion coefficient(ADC)で低信号を呈する病変を認め,脳波では後頭部から頭頂部に高振幅徐波を認めた.また,同日川崎病の主要症状6 項目を満たした.これらの所見から,MERSを合併した川崎病と診断した.計4 g/kgの免疫グロブリン療法とステロイドパルス療法を行ったが,解熱も炎症マーカーの改善も認めず,意識障害が遷延した.第9病日にインフリキシマブ(IFX)を投与したところ,数時間後には解熱し,他の川崎病症状と意識障害も速やかに改善した.川崎病の再燃,冠動脈および神経学的後遺症なく経過した.IFXがIVIGやステロイド抵抗性のMERSを合併した川崎病症例に対する有効な治療選択肢になる可能性があり,さらなる症例の集積が望まれる.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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