日本臨床免疫学会会誌
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専門スタディー2 ヒトB細胞
ES2-2 B細胞活性化因子(BAFF)およびその受容体を標的とした自己免疫疾患治療薬創製の試み
吉本 桂子鈴木 勝也関 則靖菅原 邦夫千葉 健治竹内 勤
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2017 年 40 巻 4 号 p. 278b

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抄録

  BAFFはB細胞の分化や生存に深く関与する分子として知られ,B細胞の活性化が病因の一つと考えられている全身性エリテマトーデス(SLE)やシェーグレン症候群(SS)などの自己免疫疾患では治療標的の一つとして注目されている.またBAFFの受容体であるBR3(BAFF-receptor)はBAFFと特異的に結合して細胞の活性化を誘導することからBAFFはBR3を介してB細胞の分化増殖を促進すると考えられている.このことからBAFFのみならずBR3も治療標的の一つと考えられる.我々はこれまでSS患者の末梢血単球ではBR3発現亢進が起因となるBAFFによるIL-6産生が促進され,これがB細胞のIgG産生を誘導することを示してきた.そこでBAFFとBR3の結合を阻害することが単球やB細胞でのBAFFの作用を抑制し新規治療薬創製へつながると考え,独自に開発したハイスループットスクリーニングを用いてBAFFとBR3の結合阻害作用を有する低分子化合物の探索を実施した.その結果得られた候補化合物は末梢血単球からのIL-6産生やB細胞からのIgG産生を抑制することが明らかになった.さらに自己抗体産生モデルマウスに候補化合物を投与したところ,自己抗体や炎症性サイトカイン産生に対して抑制作用を示したことから,獲得した候補化合物は自己免疫疾患治療薬のリード化合物として期待できると考えている.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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