日本臨床免疫学会会誌
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一般演題(口演)
O-5 回腸粘膜における防御機構としてのIgAの重要性
渡部 太郎永石 宇司津川 直也Jose Nisha細谷 明徳小島 裕大安達 貴弘渡辺 守
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2017 年 40 巻 4 号 p. 297a

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抄録

【背景・目的】activation-induced cytidine deaminase(AID)欠損によるB細胞クラススイッチ障害は,腸内細菌叢の変化を誘導する.ところがAID欠損は他のIgクラスの発現も阻害するため,この変化はIgA単独の欠損に直接起因するのか明確でない.そこで我々はCRISPR/Cas9システムを用いてIgA変異モデルを新たに樹立し,腸管粘膜におけるIgAの重要性を再検証した.【方法・結果】IgEとIgAの細胞内ドメイン間を標的としたguide RNAを構築し,Cas9 mRNAとともにC57BL/6胚に導入した結果,IgA遺伝子座全領域を欠損する系統(IgA−/−)を樹立し,IgA以外のIgクラス発現には影響がないことを確認した.このIgA−/−の小腸粘膜におけるsegmented filamentous bacteriaの著しい増殖を走査電子顕微鏡で観察した.腸管内容物から抽出した16S rRNAのメタゲノム解析から,回腸細菌叢の多様性変動を観察した.さらに全消化管のうち回腸粘膜に限局した炎症とともに,回腸粘膜固有層へのCD4+ T細胞浸潤,IFN-γやIL-17産生の亢進,IL-4産生の抑制が確認された.IgA−/−をCD19 Cre-YC3.60 transgenicマウスと交配し生体イメージングで観察すると,IgA−/−回腸パイエル板B細胞のCa2+流入はむしろ亢進していた.【結論】我々はIgA単独の欠損で腸内細菌叢の変化が誘導されることを再確認したばかりでなく,この変化によって腸管の恒常性破綻に起因する回腸粘膜特異的な炎症が誘発されることを見出した.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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