自己免疫疾患の病態形成にはサイトカインが重要な働きをしている.抗TNFα抗体の登場により関節リウマチ,クローン病,乾癬などの治療目標が変わるほどの進歩を遂げ,この成功により新たな炎症をターゲットとした治療法が次々と開発されている.驚くべきことは,抗TNFα抗体が承認された際はTNFαによるNFkB活性化は判明していたが,TNF受容体からNFkBが活性化される分子機構の詳細や細胞死シグナルとの分岐点制御などが不明であったということである.抗TNFα抗体療法の作用機序や関連した新規薬剤の作用機序を深く理解するにはTNFαシグナルを制御するユビキチン修飾系を理解しておく必要がある.本稿ではTNFαシグナルをユビキチン修飾系の観点から概説する.また,複数の自己免疫疾患の疾患感受性遺伝子として同定されているユビキチン関連遺伝子TNFAIP3とTNIP1について述べる.TNFAIP3とTNIP1はユビキチンを介してNFkBと細胞死シグナルを負に制御している.最後に,シグナル解析に有用なユビキチン可視化技術(PolyUb-FC)も紹介する.