日本臨床免疫学会会誌
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最新号
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総説
  • 梅田 直人, 松本 功, 住田 孝之
    2017 年 40 巻 6 号 p. 391-395
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー

      関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)ではACPA(anti-citrullinated protein/peptide antibody)が特異度高く上昇しており,臨床では抗CCP(cyclic citrullinated peptides)抗体がRAの診断において汎用されている.ACPAはHLA-DRなどの遺伝的背景に,歯周病や喫煙などの環境要因が重なり産生されると考えられているが,産生されたACPAがRAの病態にどのように関わるかはまだ十分に解明されていない.近年,ACPAまたはACPAを含む免疫複合体がTNFなどの炎症性サイトカイン産生を促進することが示された.また,RA滑膜ではPAD(peptidylarginine deiminase)が発現しており,シトルリン化蛋白が存在し,ACPAがRA滑膜のCD68陽性細胞のシトルリン発現部位に沈着することから,関節局所での炎症反応にACPAが関与していることが示唆された.さらにRAでは骨・軟骨の破壊を認めるが,ACPAの沈着により破骨細胞形成が促進され骨量低下を引き起こすことも示されている.本稿ではこれまでに報告されてきたACPAの病原性について概説する.

  • 一瀬 邦弘
    2017 年 40 巻 6 号 p. 396-407
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー

      全身性エリテマトーデスは自己抗体産生を背景に多臓器病変を呈する自己免疫疾患である.全身性エリテマトーデスでは多彩な臓器病変を認め,ループス腎炎および精神神経ループスなどが生命予後に関連する代表的な合併症として知られている.ここ30年でステロイドや免疫抑制剤により全身性エリテマトーデス患者の生命予後は改善し,5年生存率は90%を超えた.しかしながら,いまだに全身性エリテマトーデスの治療はこれらに依存することが大きく,合併症による副次的な要因で死に至らしめることもある.近年,生物学的製剤や低分子化合物などの治療標的に対してより効果的に機能する治療薬が開発され,治療抵抗性のループス腎炎や神経精神ループスに対する効果が期待されている.SLEの診断には1997年に改訂され米国リウマチ学会(ACR)によって提唱された分類基準や2012年発表のSystemic Lupus International Collaborating Clinics(SLICC)分類基準が用いられているが,診断を目的として作成されたものではなく,早期診断には必ずしも有効ではない.このような観点から全身性エリテマトーデスを早期に診断するための新しいバイオマーカーが必要である.本稿では全身性エリテマトーデスのunmet needs,特にループス腎炎と神経精神ループスについて自験例のデータを交えて概説する.

  • 種本 俊, 筋野 智久, 金井 隆典
    2017 年 40 巻 6 号 p. 408-415
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー

      ヒトには1000種,100兆個を超える腸内細菌が存在する.これらが構成する腸内細菌叢は免疫や代謝を介して宿主であるヒトと複雑な相互作用を形成し恒常性を維持している.腸内細菌叢の構成菌種の変容や異常増殖,減少はdysbiosisと呼ばれ,ヒトの腸管のみならず,全身の免疫系,代謝機構に異常を引き起こす.脂肪肝炎やメタボリックシンドローム,関節リウマチ,自閉症,多発性硬化症などさまざまな疾患にdysbiosisが寄与している可能性が示唆されている.近年の腸内細菌解析技術の発展により,ヒトの腸内細菌叢を構成する菌種の同定のみならず,代謝やタンパク質発現を介した複雑な相互関係が明らかになってきている.また,腸管上皮細胞や免疫細胞と腸内細菌との相互作用の実際が分子レベル,遺伝子発現レベルで明らかになってきており,それぞれの疾患の病態解明や新しい治療対象として実用化が期待される.炎症性腸疾患においてはCrostridium butyricumなどの酪酸産生菌が炎症抑制作用を持ち,注目を集めている.また腸内細菌叢を対象としたFMT(Fecal microbiota transplantation)も実用化に向けて検討が進められている段階である.

  • 石塚 洋典
    2017 年 40 巻 6 号 p. 416-427
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー

      アトピー性皮膚炎(AD)が,角化関連遺伝子であるフィラグリン(FLG)の機能欠失変異によって生じることが明らかになり,アレルギー性疾患発症における皮膚バリアの重要性がより注目を浴びるようになって久しい.皮膚バリアは,その機能の多くを,脂質とタンパク質の複合体である角層に依存する.角層の形成過程は複雑であり,正常な角化には,固有の機能を有する遺伝子群の有機的な発現が必要とされる.本稿では,主として物理的皮膚バリアの形成過程に焦点をあて,角化関連遺伝子固有の機能理解を深める目的で,魚鱗癬等の単一遺伝子異常による皮膚疾患群を取り上げた.さらに,ADとアトピーマーチに関わる臨床/実験医学的な最新の知見を整理し,皮膚バリア機能不全と経皮感作についての問題点を明らかにした.また,AD以外の,角化異常を伴う慢性炎症性疾患である乾癬についても取り上げ,病態との関わりについて概説した.本稿が,アレルギー/自己免疫疾患と皮膚バリアとの接点についての理解の一助となることを願う.

  • 奥 健志
    2017 年 40 巻 6 号 p. 435-441
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー

      抗リン脂質抗体症候群(APS)は病原性自己抗体である抗リン脂質抗体(aPL)の存在下で出現する血栓性疾患である.APSにともなう血栓症は難治性で再発傾向が高いため,通常永続的な2次予防治療が必要だが,画一的な治療は問題が多い.実際に高力価のaPLや多のaPLが併存する場合はより血栓症のリスクが高くなることが知られている.すなわち,aPLのプロファイルの違いが血栓リスクの違いにつながるわけだが,その血栓リスクの違いを定量化するために抗リン脂質抗体スコア(aPL-S)とGlobal Anti-Phospholipid Syndrome Score(GAPSS)が樹立された.これらはいずれも大規模な患者コホートのデータをもとに作成され,aPL-Sは,aPLの力価や種類の違いによる血栓リスクにより注目し,GAPSSはaPLプロファイルを極めて単純化して,更に古典的血栓リスク因子を加えたものである.これらは,高リスクのAPS患者(もしくはaPL陽性非APS患者)を抽出する機能が高いことが示されている.ただし,これらが臨床応用されるにはaPL測定系の標準化や現在は国際分類基準に含まれていないホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体の取り扱いなど解決しなければ問題がいくつかある.

  • 大島 茂
    2017 年 40 巻 6 号 p. 442-449
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー

      自己免疫疾患の病態形成にはサイトカインが重要な働きをしている.抗TNFα抗体の登場により関節リウマチ,クローン病,乾癬などの治療目標が変わるほどの進歩を遂げ,この成功により新たな炎症をターゲットとした治療法が次々と開発されている.驚くべきことは,抗TNFα抗体が承認された際はTNFαによるNFkB活性化は判明していたが,TNF受容体からNFkBが活性化される分子機構の詳細や細胞死シグナルとの分岐点制御などが不明であったということである.抗TNFα抗体療法の作用機序や関連した新規薬剤の作用機序を深く理解するにはTNFαシグナルを制御するユビキチン修飾系を理解しておく必要がある.本稿ではTNFαシグナルをユビキチン修飾系の観点から概説する.また,複数の自己免疫疾患の疾患感受性遺伝子として同定されているユビキチン関連遺伝子TNFAIP3とTNIP1について述べる.TNFAIP3とTNIP1はユビキチンを介してNFkBと細胞死シグナルを負に制御している.最後に,シグナル解析に有用なユビキチン可視化技術(PolyUb-FC)も紹介する.

症例報告
  • 田村 誠朗, 北野 将康, 東 幸太, 壷井 和幸, 安部 武生, 荻田 千愛, 横山 雄一, 古川 哲也, 吉川 卓宏, 斎藤 篤史, 西 ...
    2017 年 40 巻 6 号 p. 450-455
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー

      症例は65歳女性.X-17年に間質性肺炎合併多発性筋炎と診断されステロイド薬が開始.X-8年に関節リウマチを合併しタクロリムス(Tac)が併用となっていた.X年2月上旬から全身倦怠感と高血圧が出現,さらに血液検査で,血小板減少,溶血性貧血,破砕赤血球,LDH高値,高クレアチニン血症を認めたことから,血栓性微小血管障害症(TMA)と診断.TMAの原因としてcalcineurin inhibitor(CNI)腎症を疑い,Tacを中止し血漿交換を開始した.以降,破砕赤血球は消失し,血小板減少,溶血性貧血は改善したが,高血圧,腎機能低下が遷延したため腎生検を施行.その結果はTMAの病理組織像であった.ただしCNI腎症としてはTacの血中濃度は既存の報告と比較し低く,また薬剤中止後も腎機能低下が遷延していた点が非定型的であった.後に抗PL-7抗体が陽性であることが判明.本症例は強皮症の診断基準は満たさなかったが,同抗体陽性例では強皮症を合併したとする報告がある.すなわち潜在的な強皮症素因を背景にCNI腎症が重篤化した可能性が示唆された.抗PL-7抗体陽性の患者にTacを投与する際はTMAの発症に十分留意する必要がある.

  • 成相 諒子, 小林 徹, 益田 博司, 小野 博, 今留 謙一, 窪田 満, 伊藤 秀一, 石黒 精
    2017 年 40 巻 6 号 p. 456-459
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー

      川崎病は血管内皮障害や凝固因子増加により血栓傾向となることが知られている.また,ループスアンチコアグラント(LA)は抗リン脂質抗体症候群において血栓性素因になりうるが,川崎病患者でLA陽性となった報告はない.症例は2歳の男児で,発熱,眼球結膜充血,口唇発赤,頸部リンパ節腫脹と紅斑が出現し,第5病日に川崎病と診断された.便中アデノウイルス抗原が陽性であった.免疫グロブリンを投与後速やかに解熱し,他の臨床症状も改善傾向となったが,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)は徐々に延長し,第8病日に最大88秒まで達した.クロスミキシング試験はインヒビターパターンであり,LAが蛇毒法で陽性であった.低用量アスピリン治療を継続し,血栓塞栓症を生じることなくAPTT延長は改善した.同一免疫グロブリン製剤を使用した他の6人の患者ではAPTTの延長はみられなかったため,免疫グロブリン製剤中にLAが混入していた可能性は否定的であった.本例はLAが合併した最初の川崎病例である.川崎病の発症契機となる感染症ではLAを誘導して血栓傾向が増加する可能性が想定されるため,今後の症例集積による病態解明が望まれる.

  • 東 幸太, 田村 誠朗, 槙野 秀彦, 關口 昌弘, 東 直人, 北野 将康, 松井 聖, 佐野 統
    2017 年 40 巻 6 号 p. 460-466
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー

      49歳女性,主訴は全身関節痛.既往歴は橋本病.シェーグレン症候群にて当院かかりつけであったが,平成28年7月頃より前胸部痛と多関節痛が出現.来院時採血はANA: 640倍(Sp),WBC: 12700/μl,CRP: 24.8 mg/dl,赤沈1 H: 122 mm.臨床症状では高度の両手指関節の腫脹・圧痛を認めた.またASK: 1179 IU/ml,ASO: 10240倍と繰り返す扁桃炎のエピソードもあった.手指の膿疱性皮疹を認め,骨シンチでは手指関節に集積,MRIで手指関節の骨びらん,慢性再発性多巣性骨髄炎が指摘されておりSAPHO症候群が疑われた.しかし急性の炎症所見,MRIで仙腸関節炎の所見,また扁桃病巣感染症の存在から,反応性脊椎関節炎も鑑別に挙がる.両者の厳密な鑑別は難しく,診断に苦慮したため,本症例に文献的考察を加えて報告する.

  • Tohru MICHITSUJI, Yoshiro HORAI, Ayaka SAKO, Taro ASANO, Nozomi IWANAG ...
    2017 年 40 巻 6 号 p. 467-470
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー

      A female in her sixties with slowly progressive type 1 diabetes mellitus (SPT1DM) and chronic thyroiditis was referred to our rheumatology department with swelling in her fingers. A prominent atherosclerotic lesion was revealed upon brain magnetic resonance imaging, and she was found to have mixed connective tissue disease (MCTD) positive for proteinase 3 (PR3)-antineutrophil cytoplasmic antibody (ANCA). This rare case of MCTD accompanying SPT1DM and PR3-ANCA suggested that a synergy between MCTD and PR3-ANCA triggers atherosclerosis.

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